|
|
 |
| 本誌連載第45回 |
 |

|
 |
林志剛
●リン・シゴウ 弁護士・弁理士。
台湾における知的財産関連業務に携わる法律事務所として最大規模の台湾国際専利法律事務所(TIPLO)所長。
|
|
盛夏の8月は受験生にとって天国の至福に浸るか、地獄の受難を強いられるかの分かれ目のシーズンである。7月中旬に発表された大学と高校入試の成績次第で、一発で名門校に受かるか、浪人に陥るかの運命が待ち受けているわけだからだ。
台湾の学校教育の現場は、自由化、民主化の推進によって強制的な学校運営や、洗脳のような押し付け教育などの弊害から開放されると同時に、体罰も廃止された。しかし進学競争によるストレスのほか、進学率の上昇や校内の秩序を保つため、教師達は効果的で強権的な指導手段を試みている。
ゆとり教育改革で甘やかされ、集中力が散漫になった現代っ子による団体生活を無視する行為に対して、堪忍袋が切れた教師たちは時々、幼児を虐待するノイローゼの親たちと重なって見える。問題のある処罰を行った教師の違法事件を例に、不適当な指導の法律責任のあり方とその合理性を究明してみる。
国家賠償責任と確信犯
2004年8月頃、苗栗地方のX中学2年生のAは新学期開校直前の登校日に、B教師に髪が伸びすぎたなどとして指導事項の違反を指摘され、Aから体罰の代わりにスクワットを180回やるように命じられた。Aはそれに服従して繰り返ししゃがんでは跳ね上がったが、152回目あたりで大腿部が引きつりそうになり、体力も限界に達したと言って中止した。
この日は学校でドッジボールをして皆と遊んだくらいで異常はなかったようだが、翌日の登校前に、激しい腰痛と足の筋肉痛のため自宅の階段から転がり落ちた。Aの母親が膏薬で手当てして、そのまま登校させたが、下校時には既に歩行不能になるほどの激痛に襲われ、尿がワインレッド色になるほどの重症に陥った。病院で診断した結果、「横紋筋融解症」が原因と分かった。人工透析まで受けて半月ほどでやっと全治退院した。Aの親は学校に対して損害賠償と慰謝料を請求した。
学校側は、
(1)B教師は招聘契約の教師で「公務員服務法」が定義する公務員の身分を有しないので、同教師の行為に基づく賠償請求は「国会賠償法」の適用はない。
(2)B教師はA生徒に積極的に身体に苦痛を与えるような物理的な処罰の行為はなく、あくまでスクワット180回を命じただけで、A君は自分の体力をめどに無理のない範囲内でやれば悪戯に負傷のリスクもなかったはずとして、A君の方にも過失があり「過失相殺」を主張してB教師の責任の免除を要請した。
(3)A君が入院した病院となる「横紋筋融解症」はB教師が命じた肉体鍛錬の遂行と因果関係がないこと。A君は命じられた180回のスクワットを152回までしかやらなかったし、その後も一日ほど異常なく活動していたことと、またA君は「再発性単純性疱疹」の病症があるので、過激な生理反応の原因は肉体鍛錬によるものとは言いがたい;と反論して賠償責任を否定した。
鑑定報告にカギ
一方地方裁判所は2006年6月頃A君に損害賠償責任及び慰謝料の支払いを国に命じた。理由は次となる:
(1)B教師は国会賠償法による公務員の資格を有する
たとえ一般公務員の身分がなくても、B教師は公立学校の教師職員として、学校という行政給付期間の行政職務執行人員の身分で生徒達に登校の時間内に行われた行為は「国家の公権力を職務として行使する」ものと見なすべきである。その場合、Bの故意による不法行為以外の過失責任は国が負担することになる。
(2)B教師の処罰行為は不当である
たとえ物理的に強制する行動がなくても、B教師は学校の教師の立場にあって、A生徒に対しては後者が前者に服従する義務がある「特別権力関係に」位置した。若年のA生徒に教師の命令に逆らうまで自己防御の反応をすることを期待する余地が少ないので、B教師は処分の方式に十分注意すべきであった。未成年者のA君に過酷な肉体鍛錬の名目の処罰を命じる行為自体が、A君に肉体上の負傷をきたし得る合理的な予想を無視する過当で過失のある行政処分に該当するとし、学校側また国に賠償責任があると判断される。無論「過失の相殺」等の論点も却下された。
(3)Aの疾患による損害と苦痛を国が適切に賠償すべきである
病院の精密検査と鑑定報告に基づき、Aの疾患はB教師の不当な処分によるものが明らかだったので、国家賠償責任の根拠を是認した。一方、Aの両親は本来188元ほどもの金額を請求したが、裁判所はAの年齢、身分、不当処分の本質、当時の状況、教師と生徒間の信頼関係と授業秩序の維持の必要性などの見地から、66万元ほどが適正であると判断した。
|
|
|
次の 1 件
|
|
|