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文・取材 片倉佳史
旧佳山旅館。そして、陸軍士官倶楽部。ここは北投を代表する歴史建築の一つである。温泉で知られる北投の最も奥まった場所に位置し、日本統治時代は上北投(かみほくとう)と呼ばれた地域にある。

詳細な記録はないものの、佳山旅館の創業は1921(大正10)年頃とされている。そして、現在の建物が竣工したのは1925(大正14)年前後と推測される。当時、鉄道駅から最も遠い場所にあった旅館で、温泉街を抜け、そこからさらに徒歩20分を要した。しかし、温泉街から離れているだけに敷地は広く、800坪という広さを誇っていた。

建物は木造2階建てで、旅館によく見られる書院造りである。私がここを初めて訪れたのは96年のことだったが、当時、玄関や廊下、そして、床の間や畳、ふすまに至るまで、ほぼ完全に往時のたたずまいが保たれていた。和風建築ならではの情緒が凝縮された空間で、ひときわ印象深い建物であった。
そして現在、この建物は修復工事を経てリニューアルされた。建物としての傷みは激しかったが、原型に対して忠実に修復が行われ、往時の雰囲気は保たれている。すっかり生まれ変わった老建築は、芸文空間として新しい息吹が吹き込まれた。日本舞踊や茶道体験など、日本の伝統芸能に触れることができる空間として、これからも多くの人々に愛されていくことだろう。イベント・行事の詳細はウェブサイトでチェックできる。

なお、この建物は1920年代以降、陸軍が士官倶楽部・招待所として使用していたことがある。特に太平洋戦争が始まり、戦況が悪化していくと、ここは特攻隊として飛び立っていく青年たちが、最後の一晩を過ごす場所になっていた。台湾の歴史文物が展示されていた畳敷きの大広間は、そういった悲しい運命を背負った若者たちの人生最後の宴会場だったことも知っておきたい。
台北市北投区幽雅路32号
02-2891-2318
10:00~17:30
月曜休館
200元(子供と老人は150元)
http://www.folkartsm.org.tw/
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