マンゴーの郷、台南市玉井を訪ねる

マンゴーの季節が到来! 今やその人気は世界に知られているが、その美味しさに触れるなら、ぜひとも産地に足を運んでみたい。今回は台南市郊外にあるマンゴーの故郷、玉井を訪ねた。

取材・文:片倉真理/写真:片倉佳史

山積みのマンゴーに圧倒される

台南市玉井はマンゴーの郷として知られる。台鉄(在来線)の台南駅前からバスに揺られて約1時間。瑞々(みずみず)しい色合いが印象的な山道を進んでいくと、マンゴーを包む白い袋が目立ってくる。見わたすかぎりのマンゴー畑に思わず歓声を上げてしまうに違いない。

バスを降りたら、まずは青果市場を訪ねよう。屋根が付いた広い敷地に、さまざまなフルーツが山積みになっている。バナナやパイナップル、パパイヤ、そしてマンゴー。農家の人たちが収穫したものを持ち寄り、籠単位で販売している。小売りをしてくれる所もあるので観光客にも人気がある。市場全体に甘い芳香が充満し、眺めているだけでも幸せな気分になってくる。

市場を回っていると、マンゴーにもたくさんの種類があることに気づく。最もよく目にするのは日本人にもおなじみのアップルマンゴー(愛文芒果)。リンゴのように鮮やかな色合いで、味もいいことから一番の人気を誇る。

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そのほか、黄緑色の外皮で小ぶりな「土檨仔(土着種)」も存在感を放つ。これは400年ほど前にインドネシアから持ち込まれたものが土着化したもの。繊維分が多くて種が大きいため、食べやすくはないが、中高年世代には圧倒的な人気を誇る。老人たちにとっては幼少期を思い出させる味わいだそうで、懐かしのフルーツとして、親しまれている。

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また、緑色の外皮をした「黒香」というマンゴーもある。これは、へたの部分が燻したリュウガンのような香りがするのが特色。生産量が少ないので、マンゴーの産地以外ではほとんど目にすることがない珍種だ。

現在、玉井一帯で栽培されているマンゴーは10数種類だが、品種改良によって次々と新種が登場している。新しい品種の開発は自然受粉のほか、既存のマンゴーの樹に他品種を接ぎ木していく方法が採られているという。ただし、すぐに正式な品種として認められるわけではなく、質が低ければ淘汰されるので、観察期間には少なくとも3年という年月が必要になってくる。この間に、市場に出し得るものかどうかが見極められていく。

アップルマンゴーの父に出合う

数あるマンゴーの中で、最も高い人気を誇るのがアップルマンゴーだ。実は、これは台湾在来種ではなく、1954年に台湾政府農業委員会がアメリカのフロリダ州から持ち込んだものである。嘉義と高雄の農業試験場で研究が重ねられ、玉井など数カ所で栽培されることになった。

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しかし、玉井では新種の栽培に消極的な農家が多かったという。当然ながら、農家の立場から見れば、収穫を確保する必要があるので、未知の品種に賭けるためにはそれなりの覚悟と勇気が必要だ。

そんな中で唯一興味を示したのが鄭罕池さんだった。鄭さんが暮らす集落は玉井の中でも特に痩せた土地で、貧困に苦しめられていた。そんな中、鄭さんはどのようにしたら、人々が豊かになれるかを常に考えていたという。そして、この新種に人生を賭けることを決意した。

1962年、鄭さんは100本の苗木を取り寄せ、栽培を開始する。しかし、霜害や害虫など、次々と困難が鄭さんを襲う。3年後にはマンゴーの実を結ばせることに成功したが、今度は、いかに流通経路に乗せるかという問題に直面する。鄭さんは奥さんと二人三脚で各地を奔走したが、長らく苦難の道のりは続いた。

それでも諦めず、鄭さんはアップルマンゴーを世間に広めるべく、努力を続けた。そして、台北の中央市場に出荷できるようになると、アップルマンゴーの味や香りは徐々に評価されていくようになる。そして、今やマンゴーといえばアップルマンゴーとまでいわれるまでになり、日本をはじめ、海外にも名を馳せている。玉井もマンゴー王国の名をほしいままにするようになった。これらは鄭さんの並々ならぬ情熱の結果なのだ。

玉井で楽しむマンゴーかき氷

玉井を訪れたら、ぜひマンゴーかき氷を味わいたい。台北で味わうよりも鮮度が高く、ボリューム満点な上に、お値段も手ごろなので、見逃してはならない。

お薦めは市場から中正路を歩いて5分ほどの所にある「有間冰舗」。オーナーはとても研究熱心で、通常とはちょっぴり異なるマンゴーかき氷が味わえる。まずは数種類のマンゴーをミキサーにかけてジュースにする。これを冷やして氷の柱にしておき、かき氷に用いるのだ。そのため、ここのマンゴーかき氷は氷自体にマンゴーの風味が感じられる。上にはマンゴーの果肉がどっさり乗せられ、シロップ漬けした青マンゴーや手作りのマンゴーアイスなどもトッピングされる。さらに濃厚なマンゴーのソースがかかっており、まさにマンゴー尽くしといった逸品となっている。また、かき氷だけでなく、スムージーやカットマンゴーも味わえる。

この時期はぜひとも台湾南部に足を運び、本場のマンゴーを味わおう。ジューシーで爽やかな甘さのアップルマンゴーはいくら食べても飽きがこない。アップルマンゴーの開発に尽力した鄭さんの思いを噛みしめながら、じっくりと味わってみよう。


有間冰舗
地址:台南市玉井區中正路152號
電話:06-574-2869
營業時間:9:00~20:00
公休:無休


アクセス
台鉄(在来線)台南駅前にある「北站」から緑幹線(大台南公車)に乗車。終点の玉井で下車。所要約1時間10分。運賃は119元。バスは玉井の市街地中心部に着く。

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