大学生が企業で一年間研修

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李淨芳(リー・ジンファン)さん

台中市出身・台北市在住
国立高雄餐旅大学観光学部学生 利百加旅遊で研修中
1996年12月31日生まれ(21歳)

取材・文:吉岡桃太郎

台湾では、産学連携に関わる法整備が整った10年前から大学や職業高校の在学生が、企業で研修を受けるインターンシップを実施するところが徐々に増えてきている。李淨芳もこの制度で研修を受けている大学生のひとりだ。生まれ育った台中の中高一貫校の職業高等部で観光の基礎を学び、高雄の大学に進学してその知識を深め、昨年7月からは大学の授業の一環として、台北の旅行会社で1年間にわたる研修を受けている。(文中敬称略、以下同)


学生生活を台中、高雄、台北で

李淨芳は中学を卒業してからずっと観光の勉強をしてきた。日本のアニメ、漫画好きである「動漫迷(ドンマンミ―)」が多いのがこの世代で、「『ONE PIECE』とかが好きで、本当は日本語を勉強したかったんですが、語学だけでは就職口が限られてしまうと両親に説得され、興味のあった観光の勉強をしながら日本語も勉強できる学校にしました」台湾の高校では第二外国語として日本語が学べるところが増えてきており、職業高校では日本語を専門に学べる応用日本語科があるところもある。

李淨芳が進学したのは、生まれ育った台中にある中高一貫校の新民高等学校だ。同校の前身は日本統治時代に開校した台中州私立台中商業専修学校で、80年ほど前に台中で初めて、台湾人主導で創立された職業学校でもある。現在は職業高等部のほか中等部、高等部、専修部があり、職業高等部には観光事業科、応用外語科、表演芸術科などがある。ここの観光事業科で3年間、観光についての基礎を学び、大学は観光関連では有名な国立高雄餐旅大学を選んだ。

現在、台北の旅行会社で研修を受けている李淨芳は、台北、台中、高雄の違いをこう語る。「台北はみんな歩くのが速いですよね。でも横断歩道を渡るのが遅くないですか? 台中とか高雄だと(右折の)車が待っているのがわかったら、(青信号でも)急いで渡りますよ」それから高雄は台中よりも人情味にあふれているとも。「高雄は食堂の人とかも親切で、ご飯足りないだろうと大盛りにしてくれたりしてビックリしました」


観光に特化した国立大学に進学

李淨芳の通う国立高雄餐旅大学は観光に特化した大学で、2010年に専科学校から大学に昇格した。観光全般について学ぶ観光学部のほか、ホテルやレストランの運営について学ぶ餐旅学部、食文化や料理などについて学ぶ厨芸学部、観光関連の英語や日本語について学ぶ国際学部の4学部があり、台湾の大学では珍しく、キャンパスでの制服の着用が義務づけられている。「観光関連の仕事って見た目も大切じゃないですか。仕事の時の服装ということで、女性はハイヒール、男性は革靴を履いてないといけません。校門で制服をチェックされることもあります」

キャンパス内にはレストラン、ホテル、空港などのシミュレーションができる設備が整っていて、火曜日限定のパン屋があり、厨芸学部でパン作りを学んでいる学生のパンが販売されている。「パン屋のほかにも期間限定で学生が料理を注文できたりすることもあります。メニューは全部学生が考えたものなんです」机上の理論だけでなく、在学中に実務経験を積んでもらうというのもこの大学の特色のひとつだ。

李淨芳が学ぶ観光学部旅運管理学科は旅行に関するマネジメントを学ぶ学科で、3年生になると、1年間のインターンシップ、つまり企業研修を受けなければならないことになっている。50社前後ある提携企業の中から3企業を選び、面接を受けてから最終的な受け入れ先が決まるという。「私は運良く旅行会社の面接に通りましたが、面接が全滅した子もいて、先生たちが苦労していました」


旅行会社でインターンシップ

インターンシップといっても、政府が定める最低賃金は支払われることになっている。今年1月1日からの最低賃金は2万1,009元から2万2,000元(約8万2600円)に調整されたので、インターンシップなら学びながら最低でも2万2,000元が収入として得られることになる。「台北は物価が高いので給料があっても大変です。高雄じゃワンルームに住んでましたが、台北じゃ間借りなのに家賃は高雄よりも高いんです」台湾では自宅の空き部屋を学生や独身者に間貸しするケースも少なくない。

李淨芳が旅行会社でまず最初に配属されたのは受付だ。来客があると、担当者を呼びに行ったり、お茶を出したりするのが日課だ。現在は経理部に配属され、ツアーの領収書のチェックなどを任されている。一見、バイトでもできそうな仕事にも見えるが、学ぶところが多いという。「受付ではいろいろな観光業界の人に接することができたし、領収書をチェックすることで相場とか、どういうホテルやレストランを利用しているのかがわかるようになりました」

今年6月には研修を終えて大学に戻り、来年6月には卒業ということになるわけだが、卒業後の進路については悩むところも多いという。「ガイドと添乗員の国家資格も取りましたし、研修では大学で学べなかったことがたくさん取得できています。先輩方と一緒に仕事をしてきて、この仕事の大変さもよくわかりました。なので卒業後、どうするかはまだ考えているところです」旅行会社での貴重な経験を生かし、卒業後もぜひ、旅行業界で活躍してもらいたいものだ。

(2018年2月号掲載)

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