第40回 新しいサービス

wkino39_0226

日、日本から台湾に戻ったときのこと。開通して間もない桃園空港MRTに乗りました。
台北駅に着いてタクシー乗り場へ。

改札を出たあと、コロコロとスーツケースを引きずって行くと、係員のおじさんが笑顔でお出迎え。そしてぼくの乗るタクシーのナンバーを書いた紙をさっと手渡してくれました。それと同時に運転手が降りてきて、ぼくの荷物をトランクに積んでくれます。こちらも笑顔。

こういうサービスはこれまでにホテルとかでもあって、それ自体はめずらしいことじゃないんですが、このときの彼らの態度に、ぼくは微妙な違和感を覚えました。

フレンドリーなのはわかるんですが、どこかぎこちない。

「サービスしてますよ」って自己主張が何となく伝わってくるというか、うまくはいえないんですが、お客との距離が、ぼくの知ってる普通よりもちょっと遠いような気がしたのです。

で、乗車したあと運転手に話を聞いてみると、「会社が乗り場の営業権を獲得するために、契約上いろいろ細かい規定とかあって、運転手もたいへんなんだよね」とのこと。

おそらく彼らはマニュアル通りに一生懸命やってたんだと思います。

まあ、サービスがよくなることについて文句を付けるつもりはないんですが、この微妙な違和感、やっぱり気になりました。


ういえば、もう25年も昔のことになりますが、銀行が民営化されたときも同じような違和感があったことを覚えてます。

それまで台湾の銀行といえば全部国営。窓口でしわしわの汚れたお札を渡されて、もっときれいなのに換えてほしいと頼んでも、「家に帰って洗ったら」なんて平気でいわれてました。それが民営化によるお客の争奪戦で、サービスの質はどこも急上昇。ぼくが口座を開くと、ATMの操作がわからないといけないからといって、窓口の女性がわざわざ外までついて来て教えてくれたり。考えられないような厚遇に、「そんなことまでしてもらわなくたって」とこちらのほうが緊張したものです。

それに窓口の女性は美人ぞろい。明らかに「そろえたな」というのがわかるレベル。で、こんなときぼくなんかはやはり、うれしいというより「そんなに無理して大丈夫かよ」って思ってしまうのです。


しいサービスがはじまるとき、往々にしてそんなことがあります。

何もそこまでのレベルを求めてるわけじゃないんだから、普通にやってよ。ほんと、普通でかまわないんだから。とは思うものの、相手のほうは気合が入ってるもんだから、このときは何をいっても無駄。やたら笑顔とぎこちない過剰対応が続きます。

そしてぼくの違和感は募っていく……。

それにしても、どうして素直に「サービスがよくなってうれしい」と思えないのでしょうか。

それは心の中で「この状態、絶対に続くわけない」と思ってるからです。新しい年を迎えて、「今年こそは……」と思ったのも束の間、いつの間にかそんな気合も尻つぼみ……。要は、これと同じように数か月後にはサービスの質がぐっと下がって、やってる本人たちも「そんなサービス、ありました?」ってな顔になるのが、目に見えるようだからです。

だから「そんなに無理すんな」、常に変わらぬサービスを望むぼくとしては、ついこう思ってしまうわけです。

そして一日も早く「正常」なサービスに落ち着いてほしい。そんなことを密かに願ってしまうのです。

(2017年5月号掲載)

広告