第42回 公園野球

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くが住んでるところの近くには大きな公園があります。

そこをぶらぶらするのがいちばんのリラックス方法で、よく小犬を連れて散歩に行きます。

そんなときによく見かける風景。それは子供が野球をしているところです。

ただ、日本の空き地とかで見かけるような、たくさんの小学生が二つのチームに分かれて試合をしているのではありません。たいていが3人。しかも子供は1人。残りの2人はお父さんとお母さんです(たまに四人のときもあって、この場合はこれに弟がくわわる)。

で、おもしろいのが、彼らのポジションです。

ピッチャーはお父さんで、お母さんがキャッチャー、子供はバッター(4人のときは弟は内野手)。ほとんどがこの図式です。

ある日、友達の女性に聞いてみました。

「どうしてみんなこのポジションなの?」

「そんなの当り前じゃない」

理由は教えてくれませんでしたが、彼女の中ではこれ以外に考えられないといった感じ。

「じゃあ、あなたもキャッチャーやったことあるの?」

「当り前じゃない」

そんなこと聞くなといわんばかりの返事でした。


故そうなるのか。ぼくの分析では(分析というほどのことでもないんですが)、公園野球は子供のためにやってるからです。

バッターがいちばん楽しい。だからそれを子供にやらせて、お父さんとお母さんが脇役を務める。でも見てると、中にはお父さんの運動神経が悪くて投げる球がほとんど暴投なんてケースもあります。で、たまにストライクがいくと、今度は子供が空振り。お父さんに似て運動神経がよくないもんだから、バットでボールを捉えきれない。そしてお母さんはキャッチャーというよりも球拾い(そもそもキャッチャーみたいに座ってない)。

こんな親子に出くわした日には、思わず散歩の足を止め、「打て!」とか心の中で応援したりするのです。

でも、ここで新たな疑問が湧いてきます。

単純なことなんですが、どうして彼らは親子で野球をやるんでしょうか。子供同士集まってやればいいと思うんですが。

すると、先の友達がこんなことを。

「子供はみんな忙しいから、集まるなんて無理」

毎日学校と塾があるから、野球どころじゃないというのです。それで、たまの休みに親子そろって野球をするらしいです。

これを聞いて台湾の子供が何だかかわいそうになりました。野球をする時間もないなんて……。今、日本の子供たちがどうなのか、ぼくにはわかりませんが、少なくともぼくが子供のころは子供だけで野球をしてたし、チームなんかも作ったりしてた記憶があります。で、いろんなことに出くわす。ピッチャーやりたくてもやらせてもらえなかったり、九番バッターにされてなかなか打順が回って来なかったり……。こうして人生の教訓を学ぶのです。ずっとバッターだけやってるなんてありえない話です。


ういえばこの前、めずらしいケースを見ました。

小学生。たぶん2、3年生とお母さんのふたりでキャッチボールをしてたんです。お父さんと子供というのは見かけることがあるんですが、お母さんと子供ははじめてでした。

で、もっとびっくりしたのが、そのお母さんの投球です。ビシっと目の覚めるような球が子供のグローブ目がけて飛んで来る。子供のほうは半泣き状態。

それでもお母さんは手加減しません。長身のきれいなフォームから剛速球を連発します。

すごいなあ。なんて思いながら、しばらく立ち止まって見ていました。

でも、それもつかの間で、子供のほうがギブアップ。グローブを外して座り込んでしまいました。

そのあと何度か同じ公園を散歩してるんですが、あの親子を見たことはありません。

(2017年7月号掲載)

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