第46回 座席の話

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い先日、友達と二人でコーヒーショップに行ったときのことです。

デパートの中のおしゃれな装飾、開放感を感じるスペース、店内のちょうど中央には四人掛けの真四角なテーブルがいくつもあって、それを囲むように周辺の壁に沿って二人用のテーブルが並んでいます。

そのときお客はほとんどおらず、座席はどこでも選び放題の状態でした。

ただ、二人というのは微妙なシチュエーションです。一人だったら周囲の二人席、三人だったら中央の四人席に座るんですが、はたしてどちらに座るべきか。

そんなことを考えてると、店員の女性がやって来て「どうぞこちらへ」。彼女はぼくたちを二人席のほうへ案内したのです。

店の中はガラガラなんだし、四人席でもいいんじゃないの? 少しそんなふうにも思いましたが、まあ、ぼくたちは二人なんだし、二人席で何不自由することもないわけだし、と思いなおして彼女のあとについて行きました。

しばらくするとお店が混んできました。周囲の二人席は全部埋まって、中央の四人席の中にいくつか空席があるだけ。やっぱり二人席でよかった、なんて内心思っていました。

ところがこのとき、二人連れのお客がやって来ました。

すると店員は迷わず彼らを四人席に案内。それを見ていたぼくは何となく引っ掛かるものがありました。

えっ、彼らよりずっと先に来てるのに……。


員の言い分はおそらく「先に四人席が埋まっちゃったら、そのあとで四人連れが来たときどうするの」ということじゃないかと思います。

まあ、それもわかります。効率面を考えたら、それが正解なのかもしれません。

ただ、それでもどこかおもしろくない。何故でしょうか……。

数日間そんなことを引きずっていると、ひょんなことからその答えがわかりました。

その日、ぼくは女房と友達夫婦、合わせて四人で食事に行きました。

大勢の人でにぎわう市場の一角に四川料理レストラン。もう古くてぼろぼろなんだけど昔から変わらぬ本場の味が魅力で、ぼくのお気に入りのお店です。時間がまだ早かったせいか、ぼくたちは一番乗り。店内はがらんとしていて、四つほどある丸テーブルがやけに大きく感じます。

さすがに四人でこの丸テーブルを陣取るというのは気が引けたので、ぼくたちはその周囲にある四人掛けの席に座ろうとしました。

すると、店主らしい年配の男の人がやって来てひと言。

「こっちのほうが広くて座りやすいよ」

彼が勧めたのは店の中央にある丸テーブルでした。たしかに八人ぐらいは座れそうなので、四人だったら座りやすいというのはわかるんですが……、やっぱり悪い気がして「いいですよ。こっちのほうで」と四人掛けのほうへ。

「なあに、どうせきょうは拝拝(バイバイ)の日(神様を祭る日)なんだし、お客なんて来ないだろうから大丈夫」

おじさんは笑いながらぼくたちを、丸テーブルに座らせたのでした。

さて、このあと次々とお客が来て店内は満席に。それを横目で見ながら、ぼくは一番いい席に四人だけでゆったり座ってるのが申し訳なくなってきました。

ところが、そんな思いとは関係なく、おじさんは何もなかったかのように店の中を歩き回って、後から来たお客の注文を取っていました。


っきりいって、どんな席に座ろうが、それはどうでもいいことです。

でも、そこに案内されるときの店員の気持ちに敏感に反応してしまうのです。

二人連れのお客は、はじめから四人席には座らせないという態度と「こっちのほうが広くて座りやすいよ」という態度。お店の人の気持ちは確実に違って伝わってきます。

ぼくは四川料理のおじさんの顔を思い浮かべながら、「また行かなきゃなあ」と思ったのでした。

(2017年11月号掲載)

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