第47回 見てすぐわかる

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くの友達の台湾人で、つい先日沖縄へ旅行に行って帰って来た人がいるんですが、彼女がおもしろいことをいいました。

「レンタカーを借りたんだけど、ウィンカー(方向指示器)を出したつもりが、ワイパーが動いてたんだよ」

これだけ聞いて、はじめは何のことかわかりませんでした。

「でも、しばらく走ってると、同じような車に何台か出くわしたんだ。空は晴れてるのに、ワイパー動かしながら走ってる車。これ、絶対、運転してるのは台湾人」

彼女はそういいながら大笑い。

要は、こういうことだそうです。台湾では車は右側通行なので運転席は左側。ハンドルの向かって左側にウインカー、右側にワイパー。ところが左側通行の日本ではその位置が反対になるため、運転する本人がウィンカーを出したつもりでもワイパーが作動することになるらしいです。

日本人のぼくにはなかなか実感が湧かないんですが、彼女からしてみると、レンタカーを借りた台湾人はみんなやるとのこと。そんな車を見かけたら、運転してるのは台湾人だって、見てすぐわかるのだそうです(ほかにも車が右側通行の国はあるとは思うんだけど、彼女には関係ないらしい)。

見てすぐわかるといえば、日本人にだってあります。

線香の煙が湧き上がる龍山寺。日本人観光客の間でも人気の観光スポットですが、ここを参拝、神様に何か祈願をするとき、パンパーンって拍手を打ってる人がいたら、まず100パーセント日本人です。これ、日本でだったら、ごく普通で当たり前の行為なんですが、台湾ではだれも拍手は打ちません。

とはいうものの、お寺で願い事をするならやっぱりパンパーン。これやらないと景気がつかないっていうか、神様も聞いてくれないんじゃないかと、日本人だったら不安になるんじゃないでしょうか。そのせいか、ぼくも長く台湾に住んでますが、これは無意識のうちにやってしまいます。そして最近では開き直ってこう思うのです。「はい、はい。ここに日本人がいますよ」って。


本人と台湾人は見た目が似ているので、おそらく西洋人からすると外観だけでは区別がつかないんじゃないかと思います。

でも、おもしろいもので、ぼくには何となくわかります。

MRTに乗ってると、小さな子供を連れて乗り込んで来たおかあさん。その瞬間、彼女が何も言わなくても、その雰囲気からもしかして日本人かもと思ったりします。すると案の定、子供が大きな声で日本語を話し出したりする。で、「静かにしなきゃダメでしょ」と子供に向かって彼女がひと言。その光景を見ながら、「ああ、やっぱり」。こんな経験をした人、きっとぼくだけじゃないと思います。

「お化粧が違うから」

というのは、うちの女房です。彼女の話では日本人と台湾人じゃ、それぞれ好きなお化粧が違うから、それで変わってくるというのです。

たしかにそういうこともあるかもしれません。でも、ぼくには男性だって、日本人だったら見てすぐわかります。


ころが最近では見てもわからないことがたびたびあります。

「あの人、たぶん日本人」。心の中でそう思ってると次の瞬間、彼女がいきなり中国語を話し出したりします。男性だってそうです。で、この傾向、若い人たちの間で特に顕著に見られます。彼らはヘアスタイルもファッションも日本人のようで、醸し出す雰囲気まで区別がつきません。

インターネットが発達して情報の共有度が高まったからか、すっかり日本に同化してしまった留学帰りの台湾人が増えたからか。原因はともかく、こんなときはグローバル化の実態を感じながら、何となく複雑な気分になるのです。

(2017年12月号掲載)

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