蔭山征彦 Kageyama Yukihiko

香港で脚本賞受賞の快挙!台湾映画界でマルチな才能を発揮

台湾で活躍する日本人俳優が、『念念』の脚本家として大きな賞を獲得した。俳優として台湾映画に主演するほか、有名監督の映画音楽を担当したり、『KANO』では演出補ほか多くの役割をこなすマルチな才能を持つ蔭山征彦だ。台湾では今、日本でブレイク中のディーン・フジオカとよく比較されるというが、「ディーンはひまわり、僕は月見草。これは野村監督が長嶋監督と比べられた時の言葉の引用ですが、僕は野村監督でいたいのです」!

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―まずは、『念念』の香港電影評論学會脚本賞おめでとうございます。そもそも台湾映画が入賞することが珍しく、さらに日本人の受賞は初ではないでしょうか

「ありがとうございます。賞というのは、大学の時に中国語カラオケ大会でグランプリもらったくらいでしょうか。黎明の『玻璃(ガラス)の城~City Of Glass』の主題歌『今生不再』を歌いました」

―これを書こうと思ったのはいつごろなのか、そしてきっかけを教えてください。

「2011年くらいでしょうか。『不一樣的月光』という映画に出た時、海辺の街で港の防波堤を見て『念念』の防波堤のシーンが浮かびました。これはもともと“思慕”という共通テーマの3編のオムニバスだったのです。それを映画製作会社の人に見せたらすごく良いと言ってくれ、張艾嘉(シルヴィア・チャン)監督の手に渡りました。監督からオムニバスではなく1本の作品にしてみてというオファーがあり、数週間考えて三つの物語の主人公であるバーの客と女の子を兄妹にして、ボクサーを妹の恋人にしたのです。監督も気に入ってくれ、大御所なのにすごく僕を尊重してくれて、いろいろ話し合いをしながら調整していきました。本当は、もっとコメディータッチのところもあったのですが、監督はアート志向が強かったのでそこは削りました。また、本来脚本家というのは撮影現場には行かないものですが、僕は希望通り毎日現場に行かせてもらったり、本当に良くしてもらいました。監督が変えた台詞もありましたが、何度も撮り直しているうちに“やっぱりあなたの台詞の方が良い”と元に戻したこともありましたね。僕は“そうですか”と言ったけど、心の中では“だろ?”と。(笑)」

―書いている時には、キャストをイメージしていたのですか。

「もともと舞台は北海道だったので、兄は当然日本人の設定です。これは妻夫木聡みたいなイメージを描いていました。愛されるひょうきんな二枚目、妻夫木くんはコメディーも上手なのでそういうイメージでした。そして書いている時は、頭の中で登場人物を全部演じました。それで何かしっくりこないところが出てきたら、せりふを変えてみたりしましたね」

―バーのシーンで特別出演していますが、あれはオリジナル脚本にはなかったことですよね?

「そうです。柯宇綸(クー・ユールン)が変身するのはオリジナル通りで、あそこだけお客さんが笑っていましたね。唯一残ったオリジナルのユーモラスな部分です。基本的に監督と僕の思っていることは同じなので、俳優として監督が何を考えているかわかるので演技もやりやすかったですね」

―『念念』では脚本家、『KANO』ではたくさんの役割を持ったスタッフという経験で、何か変わったことはありますか。

「劇的に変わったのは、カット割りの概念を持って脚本を書くようになったということですね。そして、書きながら自分で演じていたので、俳優としても良い影響が出ています。それから、昔はガッチガチに100%の力で演じていたのですが、『KANO』の現場で俳優とは別の立場で日本や台湾の俳優の演技を毎日間近で見ていると、力を抜いている人の演技の方が良いのですよね。そういうのを見ていて、自分も必要以上に力を入れなくなりました。俳優って現場では恵まれていますよね。それまで暖かいところ涼しいところにいて出番になったら呼ばれて演技をすれば良い、でもスタッフは俳優にいい演技をしてもらうためにけっこう厳しい中で良い環境作りをする訳ですから、それを経験してから、それほど気を張らないで演技をするようになりました」

―これからの目標はやはり監督ですか。

「やれたら良いですね。自分がやりたいと思うことは、みんなに言うことにしています。そうしたら、誰かが何かのアドバイスをしてくれたり、誰かとつなげてくれたりしますから。あと、学生のころから金城武さんが好きなので、どんな形でも良いので一緒に仕事できたらいいなと思っています」(2016年4月号掲載)

profile
日本生まれ。2004年ドラマ『寒夜續曲』で台湾デビュー、05年の初映画『經過』(東京国際映画祭でも上映)で準主役、08年『海角七號』のナレーターほか映画中心に活動。09年『不能沒有你』の音楽を担当、12年『手機裡的眼淚』で日本人俳優としては田中千絵以来の初主役を務め、大阪アジアン映画祭でも上映された。『KANO』では演出補ほか多くの役割を担い、15年『念念』で脚本家デビュー、香港電影評論学會の脚本賞を受賞。特技は野球、ボクシング、作曲。

取材・文:江口洋子/写真:泉山美代子

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念念(Murmur Of The Hearts) 親の離婚で、小さいころに離れ離れになった兄妹の育男と育美(梁洛施)。育男は、仕事と生活に追われる台東の観光ガイドに、育美は自信の持てない画家になった。いつまでたっても芽が出ないボクサーの阿翔と付き合っていた育美は、ある日、自分が妊娠したことを知る……。3人の若者はそれぞれの過去を背負いながら生きていたが、偶然の出会いにより、自分たちの生きる道とあり方を悟る魂の物語。 公開:2015年4月(台湾) 監督:張艾嘉(シルヴィア・チャン) 出演:梁洛施(イザベラ・リョン)、柯宇綸(クー・ユールン)、張孝全(チャン・シャオチュアン)ほか (念念_劇照2 写真提供:台北電影節)

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