楊三郎美術館 & カフェ

台北の隠れくつろぎ空間

d新北市永和區博愛街7號(MRT頂溪2番出囗より徒歩5分)
02-2927-0077
営業時間: 11:00~17:00(月曜休館)
※金土は要予約で21:00迄営業延長可。
入館料:100元
www.yangsanlang.com.tw/jp フェイスブック

%e2%97%8bckl_4437楊三郎 Profile: 1907年生まれ。(1907~95年)幼少時、日本人画家・塩月善吉の絵を見て画家になることを決意。家族の反対を押し切り、アルバイトで貯めたお金で15歳の時に単身日本へ渡り関西美術学院で洋画を学ぶ。多くの洋画家を輩出している日本の美術協会「春陽会」の会員になるなど日本で一定の地位を確立した後、フランスに留学。サロン・ドートンヌ展で特選入賞後、台湾に帰国。92年に「華夏一等勲章」、93年に「國家最高文藝勲章」を授与され芸術国宝的存在に。「台陽美術展」「全國油画美術展」など、現在台湾で最も権威ある美術展を立ち上げるなど、台湾美術界の発展に大きく寄与した。

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台湾の近代美術界は、日本統治時代、日本に留学した洋画家により目覚ましい発展を遂げた。その発展を牽引し、台湾美術界の礎を築いたのが楊三郎(1907~1995年)という洋画家である。幼少時に画家になることを決意し、日本で洋画を学んだ。
作風は印象派。モチーフは自然の四季、風景から静物、人物まで多岐にわたるが、特に大自然の迫力ある風景画で知られる。日本の東尋坊、白馬山脈、台湾の玉山、野柳をはじめとする山海を描いた作品は、「山有山的雄偉,海有海的壯闊」(山には山の雄々しさ、海には海の雄大さがある)という言葉で、描写の素晴らしさを称えられた。美術館のオーナーで息子の星朗さんによる三郎像は「大らかで豪快な人だった。一方で、紙幣を挟んだ雑誌を薄給の後輩にさりげなく渡すなど細やかな心遣いを忘れない優しい面も」。愛妻家としても知られ、妻で画家の許玉燕を描いた「持扇夫人像」は自身の代表作ともなっている。そうした人柄が作品に色濃く反映されているかのような、力強さと温かさが感じられる画風が魅力

知られざる名所・楊三郎美術館

台湾では知らない人がいないほどの高名な画家・楊三郎の美術館は、MRT頂溪駅からすぐの石畳が美しい通りにひっそりと建っている。蓮の花が美しい庭園のあるこの土地は、かつて楊三郎その人が暮らした場所で、約600坪という広い敷地を生かし1991年に美術館を創設、2015年にリニューアルオープンした。5階建ての美術館には、100号サイズ(1辺1620ミリ)の風景画から、妻を描いた「持扇夫人像」、同じ時同じ風景を夫婦でそれぞれ描いた絵まで、常時100点ほどの作品が展示されている。楊三郎はその生涯に3000点ほどの作品を残したといわれるが、各年代の絵がバランスよくそろっているので、色味を抑えた日本留学時代、色彩がぐっと鮮やかになったフランス留学時代、そして遺作まで作風の変化を追うことも可能だ。日本統治時代と民国以降では異なるサインを見比べてみるのも面白い。
美術館に隣接する建物も見逃してはならない。創建約100年、古跡指定を受けた楊三郎の生家が資料館として開放されており、楊家および当時の歴史を記録した資料から、生前の楊三郎のアトリエまで見ることができる。楊家はいわゆる名家で、父・仲佐は菊の花を愛する詩人であった一方、政治家としても優れた手腕を発揮し、多くの財界人と交流があったという。楊三郎の妻が作る佛跳牆(祝いの席で供される高級食材を使った台湾伝統料理)は大変評判が高く、楊家で佛跳牆を食し庭の菊の花をめでるのは、当時一種のステータスともなっていたそうだ。当時庭を埋め尽くしていたという菊の花は残念ながらもうないが、歴代総督や財界人が佛跳牆を食したという円卓はそのまま保存されている。

また楊三郎の意外な交友関係にも触れておきたい。30代のころ台北郊外で写生していると、後ろでその様子をいつも興味深く見ている背の高い青年がいた。やがて二人の間には友情が育まれ、交流は晩年まで続いたという。その人物とは李登輝元総統。楊三郎はその後「総統になると知っていたら、頭でもなでておけばよかった」との軽口で李登輝氏を大笑いさせた。李登輝氏が後に彼のために作らせたという美術館の前の石畳、美術館入り口にある題字にその交流の一端を垣間見ることができる。

古跡でまったりカフェ

梅原龍三郎ら日本人画家とも交流が深く親日家だった一面は、美術館に併設された「庭園カフェ」に取り入れられている。おでん、カレーライスといった軽食から、本格的な日本の味を味わえる松花堂弁当まで食事メニューも充実。またお酒をたしなむ方のためにワイン、シャンパンのほか、「南部美人」の「日本酒飲み比べ」も。このほか自家製プリン、バナナケーキなどのスイーツもそろっている。また、当時財界人の舌をうならせたという楊家秘伝の味を再現した佛跳牆も予約すれば味わえる裏人気メニューだ。
広い敷地を生かしたカフェは、オープンエア、テラス、屋内(洋・和)と、それぞれ趣向が異なる空間が点在しており、訪れるたびに新鮮な気持ちになれそうだ。美術館・古跡を見た後は、この静かなカフェスペースでくつろぎの時間を過ごしたい。ガイドブックには掲載されないエリアにあるが、MRTでは鼎泰豐がある東門駅から実はたった2駅の距離。台湾リピーターなら、一度は訪れておきたい名スポットである。毎月1度、文化イベントも開催されているのでHPも要チェックだ。

 

取材・文:編集部/写真:彭世杰

(2016年8月号掲載)

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