KAVALAN 台湾発、王者の風格を持つシングルモルト

香りを嗅いだ瞬間、鼻腔が喜びの声をあげる。口にころがした瞬間、舌がほどけて蕾が目を覚ます。「KAVALAN」―先月8月1日から年末まで、その名を冠したネオンが、あのニューヨーク・タイムズ・スクエアを照らしている。

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左から、甘みが強く女性に人気の「Solist Port Single Cask Strength Single Malt Whisky」(3500元)、本文で紹介された「Solist Vinho Barrique Single Cask Strength Single Malt Whisky」(3500元)と「Solist Amontillado Sherry Single Cask Strength Single Malt」(8000元)。

「最初は誰もが『台湾で良い品質のウイスキーなんて不可能だ』と口にしたよ」と金車グループの李玉鼎・總經理(CEO)は振り返る。それからわずか10年。ウイスキー界で最も権威ある賞「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」にて2年連続の金賞を受賞した。とにかく今、世界で話題沸騰中のこのお酒は、台湾は北東部の街、宜蘭で生まれた。
「大事なのは自分を信じることだ。頭の中の閉じた鍵を開けば、きっとできると」

カバランの地の恵みをうけて

宜蘭の古い名を「カバラン」といい、かつてそこに暮らした原住民族はカバラン(葛瑪蘭)族と呼ばれた。一年を通して雨が多いので、雪山山脈から豊富な天然水がもたらされる。そして透きとおった空気と、湿度の高い亜熱帯の気候。「KAVALAN」(噶瑪蘭)ができるための唯一無二の環境だ。
サッカー場30個分ほどの広大な敷地を持ち、年間100万人が工場見学に訪れるという宜蘭の工場では、現在年間500万本が生産されている。建設中の第二工場は2016年末にも完成予定で、そうなれば生産量は2倍となる。

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台湾がWHOに加入し酒の専売事業が開放された2002年に工場が設立、製造が開始された。満を持しての発売開始は、それから6年後の2008年。

KAVALANの原料となるのは、ヨーロッパ産の大麦。これに水を吸わせ発芽させてウイスキーの元となる「麦芽」をつくり(モルティング)、乾燥させた麦芽を粉砕し温水を仕込めば「麦汁」が抽出できる(糖化)。この「麦汁」に「酵母」を加え長時間かけて数パーセントほどのアルコール濃度に発酵させたものを2度蒸留する。


出来上がった蒸留液から「スピリット」のみが取り出され、カスクと呼ばれるオーク樽に詰められる。ワイン、ポート、シェリー、バーボン。さまざまなお酒のカスクが世界中から集められ、工場でもう一度組み立ててから、チャーリングという表面を焼く作業が加えられる。これによってオークの表面は活性化し、ウイスキーの熟成に適した状態となるのだ。
普段は外部からの立ち入りが禁止されている5階建ての酒蔵に特別に入れてもらった。蔵全体にオークの芳ばしい香りが充満し、肺いっぱいに吸い込むと幸せな気分になった。湿度と温度が高いため本場スコットランドよりも短い時間で熟成が進むという。
最高級シリーズ「SOLIST」(=シングルカスク。一つの樽から瓶詰めされたもの)より、2016年WWAで金賞の「Amontillado Sherry Single Cask Strength Single Malt」をカスクから試飲させてもらった。バナナ・マンゴー・パイナップル。口に含むと南国フルーツを思わせる芳香が喉の奥まで広がる。蒸留液とカスク、それに台湾の空気が化学反応を起こした結果出来上がった、琥珀色の「甘露」だ。


また、同じ蒸留液が熟成されたものでありながら、完成したウイスキーはカスクの種類や大きさなどにより、全く異なる香りや色・味わいを持つ。まるで、同じDNAを持つ双子が異なる家庭環境で育った結果、まったく違う個性を持つのに似て、これもウイスキーの面白さといえるだろう。
現在KAVALANのラインアップは17種類あるが、その中でも特に人気が高いのが2015年のWWAで金賞を取った「SOLIST」のワインカスク「Vinho Barrique Single Cask Strength Single Malt Whisky」。市場では品切れ状態が続いており、現在購入できるのはここ宜蘭の工場のみ、しかも一人一本までというフィーバーぶりである。また、工場を訪れたならぜひとも体験してほしいのが、ウイスキー・ブレンドのDIYだ。三種類のシングルモルトを好きな割合で調合して、世界に一本だけのユニーク・マイボトルが出来上がる。

文化的責任を熟知した企業として

「KAVALAN」を生み出したのは、1956年に設立され、洗剤・飲料・食品など多様な分野で台湾人の生活と深く関わってきた金車グループだ。各地に店舗のあるカフェ「MR.Brown」を経営しているといえば、思い出す人も多いだろう。そのほか、基金会を作り地元の若い芸術家を支援したり文芸賞を設けるなど、芸術方面へも力を入れている。文化の深まりにおいてコーヒー・酒・芸術は三大要素とは筆者の考えだが、その全てにおいて台湾で大きな役割を果たしている金車グループの社会意識の高さには敬服せざるを得ない。またそういう企業だからこそ、台湾の誇りともいえるウイスキー・ブランドを生み出せたといえるだろう。
世界を舞台に羽ばたくKAVALANから、これからも目が離せない。

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創業者・李添財氏(写真右)から事業を引き継ぎ、次はKAVALANのグローバル化を目指す李玉鼎・總經理(写真左)。 (写真提供:金車股份有限公司

KAVALAN (金車股份有限公司) 
URL: www.kavalanwhisky.com

●台湾直営店(一部)
南京二店(日本語スタッフ常駐)
地址:台北市中山區南京東路二段1號(新生高架橋そば)
電話:(02)2511-0213
營業時間:11:30~20:30

南京一店
地址:台北市中山區南京東路二段218號(建國北路との交差点)
電話:(02)2503-0165
營業時間:11:30~20:30

日本での販売店
リカーストア オーガリー(北海道)、日本橋三越本店(東京)、伊勢丹新宿店(東京)、ビック酒販(千葉/静岡/大阪)ほか

KAVALAN酒廠(造酒工場)
所在地:宜蘭縣員山鄉員山路2段326號
アクセス: 宜蘭轉運站から葛瑪蘭客運の「宜蘭勁好行752」に乗車し員山農會成功分部で下車、または國光客運の「1786線」に乗車し下深溝で下車。台鐵宜蘭駅からタクシーの場合は15~20分(250~300元)。
インフォ:平日9:00~18:00、土日祝日9:00~19:00/参観料無料/見学自体は予約不要だが、予約でガイド付き見学も可能。


取材・文:謝ひかり/写真:曾韋翰

(2016年9月号掲載)

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