YouBikeサイクリング

微笑單車行(台北/新北/台中/彰化)

 現在、台北196ヵ所のほか、新北に200、台中に57、彰化に68のステーションを持つレンタサイクル「YouBike」。通学・通勤に利用する人も多く、バイク王国だった台湾に新しい生活文化をもたらしている。また、健康や環境にいいだけでなく、旅行者も気軽に利用できるのがYouBikeのもう一つの魅力だ。MRTの駅からはちょっと遠い場所に行きやすくなったり、移動中に新しい発見や出合いがあるかもしれないYouBikeは、街をもっと知りたい人にとって最高のツールとなる。
今回は、台北の変わる街並みと河沿いの異なる風景が楽しめるという、「GIANT」のYouBike事業部お薦めルートの一つを体感した。秋の気配を感じるころ、このルートを参考にYouBikeで街へ繰り出してみよう!

取材・文:高橋真紀/写真:鐘政勇

新しい台北に出合えるサイクリングの旅

台湾の長い夏にもようやく終わりが見えて、朝晩は涼しい風が吹いてくるころ。クーラーのある場所から場所へ急いでいた真夏と違って、ほんの少し足を延ばして遠くへ行ってみたくなる、そんな季節がやってきた。
台北市は東京23区の約半分の面積しかない、こじんまりとした街である。筆者のようにバイクを運転できない人が、台北で小旅行をするのにピッタリなのが自転車だ。
台北市、自転車といえば市内のあちこちで見掛けるようになったオレンジ色のレンタサイクル「YouBike」。大成功を収めているというが、普及率は街を歩いていても明らか。信号待ちのスクーターの列に、オレンジ色の自転車が混ざる光景も当たり前になってきた。
バイク大国・台湾で、YouBikeが成功した秘訣はどこにあるのだろう。まずは自転車に乗ってみる前に、台湾が世界に誇る自転車メーカー「GIANT」のYouBike事業部を訪れ、事業部のスピーカーを務める劉麗珠さんにお話を伺った。劉さんによると、今でこそ世界ナンバーワンの稼働率を誇るYouBikeも、2009年に台北市政府を中心とする信義區のみでスタートした当初は、稼働率0.5%にも満たない難事業だったそうだ。その後、政府の交通担当者が、レンタサイクル事業が進んでいるヨーロッパに飛び、視察を重ねたという。その結果整備されたのが、登録システムの簡略化と自転車を貸し借りするステーションの増設。まずはここから“体感”してみたい。

登録料のいらないシンプルなシステム

さっそく悠遊卡を使った登録にトライ。「Kiosk」と書いてある登録用の機械で、タッチパネルを押していけば簡単だ。当初は登録時に保証金が必要だったそうだが、今ではその必要もない(クレジットカードでの登録にはデポジットが必要)。登録したカードを乗りたい自転車のスタンドにかざし、緑のランプが点灯すれば「乗ってよし」のサイン。カチャリとスタンドから取り外した瞬間から自転車は自分のものになる。鍵もかけられるしカゴもついているので、途中で買い物したりお茶をする時も安心。24時間営業だから、1日中借りていても大丈夫。初めは信義區にしかなかったステーションも、2015年9月現在でなんと196にまで増えているという。MRT駅構内の地図にも表示があり、スマートフォンのアプリを使えば自転車の状況も一目瞭然だ。
YouBike初心者である筆者のために、事業部の謝坤峰さんがお薦めのルートを選んでくれた。MRTの中山駅から迪化街方面へ抜け、ゴールは圓山駅という軽めのコース。比較的新しい自転車を見つけたらタイヤに空気が入っているかどうかをチェック。スタンドから取り出したらサドルの高さを調節し、いよいよスタートだ。
中山駅から南京西路をまっすぐ走ると、迪化街の入口までゆっくり走っても10分ほどの距離だ。布問屋街として知られる永樂市場の前にもステーションがあるので、ゆっくり散策するならここでいったん自転車を返してもいいし、駐輪して鍵を掛けておいてもいい。民生西路から大稲埕の埠頭(ふとう)へ出て、のんびりと景色を楽しむこともできる。

創業65年の老舗でふれあい

「老街をさらに北上すると、美味しいお店がある」という謝さんの案内で、問屋街を抜けて、MRT「大橋頭」駅を越え、さらに古い長屋風の建物が並ぶ迪化街の街を15分ほど走る。辿り着いた「老麺店」という店は、老街にポツンと立っているのに常連さんで満員で、見るからに美味しそうなたたずまい。なんと創業65年だという。オーナーは御年88歳。日本統治時代を知る方で、日本語の質問にも答えてくれた。看板料理は「肉骨麺」。ホロホロに煮込まれた豚肉とダシの効いたスープはシンプルなのに驚きの美味しさ。乾麺(汁なし麺)の特製ソースも濃厚でどんどん箸が進み、台湾料理の底力を知る思いがした。自転車だからこそ出合えた味だと思うと、喜びも倍増するから不思議だ。


オーナーに見送られて店を出たら、MRT圓山方面へと進む。ここから医療の神様・保生大帝を祀(まつ)った大龍峒保安宮までは、趣きのある狭い路地を抜けて10分足らず。圓山駅まではすでに徒歩圏内のはずだ。駅を目前にして、謝さんが「もう一軒面白いところがある」と案内してくれたのが、「臨済護國禅寺」というお寺。日本統治時代に建てられた木材建築の寺院がそのまま残されたものだ。周囲の管理棟などは派手なペイントのいかにも台湾風な建物なので、木肌の露なお寺はまるで時空を越えて迷い込んできたようなちぐはぐさがある。刻まれた日本人の名前に目を奪われて、しばしお寺の経てきた歴史と時間を思った。
圓山駅までの道も整備されて走りやすくなっていたが、交差点での信号待ちの間、車やバイクが猛烈なスピードで走っていくのを見て、事業部の劉さんが話してくれたYouBikeの利点をあらためて思い出した。「自転車が走れば交通習慣そのものが変わっていく。車が自転車に道を譲れば、車道が狭くなるので必然的にスピードも落ちます。空気もきれいになって、街も人も健康になるんです」。
圓山の駅前にあるステーションで自転車を返却し、YouBikeの旅は終了。たった数時間で新しい体験が幾つもできたことに驚く。取材の日はまだ残暑厳しい折だったが、自転車はペダルを踏むたびに新しい風を運んでくれることに気付いた。台北の風をこんなに気持ちいいと感じたのは、初めてかもしれない。

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お寺の日本人名に歴史を再認識。

今回のルート
中山駅4番出口→大稲埕碼頭(埠頭)→迪化街→老麺店→大龍峒保安宮→臨済護國禅寺→圓山駅

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(2015年10月号掲載)

YouBikeの登録法

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