牛頭牌沙茶醬 – 台湾の鍋には欠かせない 国民的調味ソース

日本人として鍋好きを自負していたが、台湾人には負ける。ありとあらゆる所にしゃぶしゃぶ屋があるだけでも驚きなのに、そのほとんどが1人前サイズの一人鍋。大勢でつつく楽しさがない分、自分のペースで好きなものを食べられる。肉や具材を好きなだけ提供するビュッフェ形式の鍋屋さんも定番で、真夏であろうが鍋店はどこも盛況だ。
チンゲン菜やタロイモも立派な鍋用野菜で、具材も日本とはだいぶ違うのだが、台湾火鍋の特徴といえば、つけだれに必ずといっていいほど付いてくる茶色の調味料。これが今回ご紹介する台湾の定番ソース、「沙茶醬」である。
台湾で沙茶醬の代名詞といえば、「牛頭牌」というブランド。中国大陸から移住した外省人のオーナーが1958年に創業した好帝一食品公司が製造販売している商品だ。「沙茶粉」という粉末ソースの発売でスタートした同社は、すぐに瓶詰めの「沙茶醬」を生産し、台湾全土にその存在を広めることとなった。創業者の劉來欽氏は「台湾沙茶醬の父」と呼ばれており、沙茶醬の国内販売シェアは、現在もなんと90%を誇るという。1人暮らしにもちょうどいいサイズから業務用まで、瓶詰めと缶詰が販売されており、全聯福利中心、頂好(ウェルカム)などスーパー各店ならどこでも手に入る。業務用は鉄板焼きや牛肉麺のお店で使われることも多いそうだ。
そもそも「沙茶醬」とはどのような代物なのか。醤油のような色だが、かなりドロッとした具材たっぷりのソースだ。煮干し、干しエビを原料とした海鮮ベースで、ネギやニンニクを加えているのだが、なんとなく甘い。鍋のつけだれ以外に炒め物やチャーハンの調味
料としても重宝されている。
甘さが前面に出ている台湾風の味が特徴なのだが、もともとはマレーシアやインドネシアなどの東南アジア地域で、焼き鳥などに使われていたsa te(サテ)と呼ばれるソースが起源とされている。「茶」という文字もお茶とは関係なく、「サテ」を台湾語に当てると「沙茶」という文字になるので、これにソースという意味の「醬」をつけて命名された。東南アジアのサテが中国南部に入って広東省の潮汕という地域で流行の調味料となり、その後、国民党政府の進出によって台湾に持ち込まれた。
本家サテにはピーナッツや大豆が欠かせないが、牛頭牌では使用していないので、イスラム法で認められたハラール料理にも使うことができる。添加物やアミノ酸調味料なども含まず、天然の材料にこだわった製品はGMP国家認証ほか、ISO9001及びHACCPなど各種食品安全基準を通過している。
昨年発売された「紅蔥醬」調味ソースも人気上昇中。紅蔥頭(エシャロット)をベースにした濃厚な味が特徴的だ。材料の紅蔥頭はすべて台南、雲林などの台湾産を使用しており、香りが強いのも支持される理由。パンチがあるので、麺類の調味料としてもピッタリだ。%e9%a6%99%e8%8f%87%e6%8b%8c%e9%86%ac%e5%95%86%e5%93%81%e7%85%a7wlow
好帝一食品の林志穎・副總經理(副社長)に今後の展望を聞いてみると、明快な三つの答えが返ってきた。「一つ目は調味ソースの分野でナンバーワンになること。二つ目は商品開発力を強化すること。三つ目は市場を海外へ広げ、日本やその他の国にもより多くの商品を届けること」。沙茶醬は2008年にISO22000國際品質認證を獲得し、欧米への輸出もスタート。世界中のチャイナタウンで販売され、日本でも横浜中華街の中華食材店で買うことができる。
2016年3月にはシイタケの香りが食欲をそそる「香菇拌醬」を発売。現在は四川料理などに使われる「麻辣醬」を試作中で、まずは四川料理の本場・中国大陸で発売して反応を見てから、台湾でも発売する計画だという。このほか素材にこだわった「養身高湯」(健康だしスープ)も開発中。食の安全に敏感な世間のニーズに応えていきたいと考えている。「企業理念の根本は、自分の本当に良いと思う商品を世に送り出すこと」と林副總。沙茶醬から始まった消費者目線の商品開発は、まだまだ可能性を秘めているといえそうだ。

取材・文:高橋真紀

(2016年8月号掲載)

 

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