海風の吹く郷愁あふれる町~花蓮へ

取材・文:片倉真理/写真:片倉真理、片倉佳史(かたくらドットねっと)

花蓮は台湾東部を代表する都市。俊足で知られる特急「普悠瑪(プユマ)」号に乗車すれば、所要わずか2時間ほどで到着する。以前よりもぐっと身近な存在となった花蓮。今月はその歴史に触れる愉しみを紹介してみたい。

将軍府02縮小.jpg1.「夫妻樹」と呼ばれる大樹と立派な木造家屋(将軍府)。

かつては日本人が多く暮らしていた

山紫水明で知られる花蓮。ここには台湾が世界に誇る景勝地「太魯閣(タロコ)峡谷」があり、年間を通して大勢の行楽客が押し寄せる。その玄関口となる花蓮には古き良き面影を残す家並みが残り、初めて訪れた人でもどことなく懐かしさを覚えてしまう。

周知の通り、台湾東部は厳しい自然環境を持ち、長らく無人の地となっていた。本格的な開発が始まったのは日本統治時代に入ってからである。特に大正期に多くの日本人が移り住み、開拓を進めていった。その苦労は想像を絶するものがあった。当時、この地は「花蓮港(かれんこう)」と呼ばれていたことにかけ、入りたくても「入れん港」、暮らしたくても「食われん港」、一度入ったら「帰れん港」などと揶揄(やゆ)されたという。

市内には今でも日本統治時代の木造家屋を見かけることが多い。最近ではこうした家屋を整備する動きが活発となっており、カフェやショップ、レストランなどにリノベーションされるケースが少なくない。町の規模は大きくないので、半日もあれば十分に観光できる。清らかな空気に包まれながら、のんびりと散策を楽しみたい。

 

散策は旧市街から始めよう

市内南部の旧市街地区は旧花蓮駅周辺に広がっている。中山路を進んでいくと、重慶街の交差点近くに「花蓮鐡道文化園區」がある。ここは日本統治時代に設けられた花蓮港駅があった場所。駅自体は1982年に廃止されているが、台湾総督府の鉄道部花蓮港出張所の建物は今も姿を留めている。門をくぐると、松の大樹と和洋折衷の趣ある木造建築が目に入ってくる。中庭を囲むように建物が残り、台湾東部の鉄道史に関する文物が展示されている。

日本統治時代はここを中心に市街地が形成されていた。近くの噴水前には開拓移民村の経営や製糖事業などで地域に貢献した賀田組の事務所だった建物も残る。現在は「阿之寶」というカフェ・レストランとして利用されている。

最近注目されているのは、中華路と中正路の交差点に位置する「a-zone花蓮文化創意産業園區」だ。ここは戦前に製酒工場として設立された場所で、2012年から地場産品や文化景観を紹介するレジャースポットに生まれ変わった。広々とした敷地内には事務所や倉庫、幹部職員の木造宿舎など、日本統治時代の建物が残っており、カフェやショップ、展示空間などとして利用されている。地元クリエーターたちによる手工芸品や雑貨などのほか、花蓮県舞鶴産の紅茶や蜂蜜ケーキなどの特産品が販売されている。土産物探しが楽しいスポットだ。

鉄道文化園区02縮小.jpg4.鉄道警察署だった建物も残る「花蓮鐵道文化園區 二館」。

花蓮文創園区04縮小.jpg9.製酒工場を再利用した「花蓮文化創意産業園區」

花蓮らしいショッピングとグルメ

さらに、近くの節約街には老家屋を利用した個性派ショップ「O’rip 生活旅人」がある。「O ‘rip」とはアミ族の言葉で「生活」を意味する。ここは地元クリエーターたちが手掛けた生活雑貨やオーガニック食品、さらには台湾の原住民族音楽CDなどを扱っている。また、同じく節約街にある「花蓮日日」はしゃれた雑貨を扱うほか、民宿や食堂を併設しており、若者たちに人気のスポットとなっている。ぜひこちらものぞいてみたい。

散策の途中でお腹が空いたら、中山路と中正路との交差点に位置する「周家蒸餃」へ。ここの看板メニューである「小籠包」は皮がふっくらと厚く、ミニ肉まんのようなスタイルだ。隣接する「公正包子店」もメニューは同じで、どちらも行列が絶えない人気店となっている。1個5元(約16元)と格安なので、食べ比べしてみるのも面白いだろう。

食後には中華路と博愛街の交差点近くにあるかき氷店「五覇焦糖包心粉圓」へ。ここのかき氷は豆花や芋団子などのトッピングの上に氷をのせ、その上から特製キャラメルソースと練乳を格子模様にかけている。オーナー自ら考案したというオリジナルで、味だけでなく、見た目もかわいい。地元の人にも観光客にも愛されているご当地デザートだ。

 

美崙山周辺に残る歴史スポット

市街地の散策を終えたら、市内北部に位置する美崙山の方面にも足を運んでみたい。山麓を流れる美崙渓の畔には、戦時中に日本の幹部将校たちが暮らしていたという木造官舎が残っている。中正橋のたもと付近の路地を入ると、数戸の和風家屋が整然と並んでいる。現在は「将軍府」と呼ばれ、花蓮の歴史に関する資料を展示する空間となっている。ここでは浴衣の貸し出しサービスが人気を集めており、日本家屋を背景に浴衣姿で記念写真を楽しむのが流行しているという。

散策の最後には坂道を上った高台にある「松園別館」へ。ここは戦時中、軍隊の招待所として建てられ、質素ながら、しゃれた造りとなっている。現在は芸術展示スペースとして利用されている。広々とした庭には樹齢百年の松の老木が聳(そび)え立ち、太平洋の海原が一望できる。カフェも併設されているので、心地よい海風に吹かれながらゆったりとしたひと時を過ごしたい。

花蓮市内には著名な観光スポットがあるわけではないが、そこかしこに日本の面影が感じられ、素朴な風情が多くの人を引き付けている。日帰りも可能になっているので、リフレッシュの旅に出かけてみてはいかがだろう。

%e5%b0%86%e8%bb%8d%e5%ba%9c03%e7%b8%ae%e5%b0%8f              13.タイムスリップしたかのような家並み。

%e6%9d%be%e5%9c%92%e5%88%a5%e9%a4%a802%e7%b8%ae%e5%b0%8f              14.自然に包まれた歴史空間「松園別館」。

(2016年10月号掲載)


アクセス

台北から花蓮までは台灣鐵路(在来線)の太魯閣号、普悠瑪号、もしくは自強号に乗車。所要約2時間から3時間。運賃はいずれも440元。太魯閣号と普悠瑪号は全席指定席で立席では乗車できないので注意しよう。また、週末は混み合うのでチケットは早めに購入したい。花蓮駅周辺にはレンタサイクルや電動自転車などのショップもある。徒歩の場合は旧花蓮駅までバスで移動してから散策を始めたい。


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