甘い香りに包まれたパイナップルの郷-台南市・關廟

取材・文:片倉真理/写真:片倉佳史(かたくらドットねっと)

台湾は言わずと知れたフルーツ大国。中でもパイナップルはその代表格とされる存在だ。中国語では「鳳梨(フォンリー)」と呼ばれ、台湾語では福を意味する「旺來(オンライ)」と発音が似ているため、縁起物としても親しまれている。その美味しさの秘密を探ってみよう。

種類豊富な台湾のパイナップル

台南から車を走らせること約30分。ここ關廟はパイナップルの一大産地として知られている。温暖多湿な気候はもちろん、適度な起伏があり、日当たりが良い斜面がポイントとなる。そして、赤土の土壌がパイナップルの美味しさを育む。現在、この一帯の栽培面積は約800ヘクタールを誇り、生産量は2万トンを超えるという。

關廟のパイナップル栽培は戦後になってから始まった。もともとは日本統治時代に陸軍の訓練地だった丘陵地帯を畑に転用したのがきっかけで、1960年代後半からは缶詰の製造が盛んとなって黄金期を迎える。しかし、1980年以降は安価な東南アジア産のパイナップルが台頭し、生産量は激減。その後は品種改良が積極的に進められ、高い評価を得るようになった。これまでに約20種が誕生している。

現在、關廟では約10数種類のパイナップルが栽培されている。シャカトウ(シュガーアップル)に似た風味を持つ「釈迦鳳梨」やミルクのように果肉が白い「牛奶(牛乳)鳳梨」、さらには独特な香りを誇る「香水鳳梨」といった品種が知られている。

その中で最も多く栽培されているのが「金鑽鳳梨」。これは濃厚な味わいのみならず、繊維質が少ないという特色をもち、親しみやすい食感となっている。また、芯まで柔らかくて甘いことも自慢で、果肉を丸ごと全部味わえる。

余談ながら、パイナップルケーキによく用いられるのは「土鳳梨」(正式名称は開英種1号~3号)という品種。これは繊維質が粗く、酸味が強いのが特色だが、品質管理が難しく、少し前までは敬遠する農家が多かった。しかし、昨今のパイナップルケーキのヒットによって、ここ数年は土鳳梨の栽培面積も増えているという。

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1.排水が良い傾斜地はパイナップル栽培に最適。

夜明け前から始まる収穫作業

筆者が撮影に訪れたのは6月上旬。早朝6時前に到着したが、朝もやに包まれた農場ではすでに収穫作業が始まっていた。聞いてみると、毎朝4時には作業を始め、8時前には終了するという。パイナップルの栽培地には日陰がないため、強烈な日差しと暑さとの闘いだ。しかも、強靭な葉やトゲから身を守るため、作業時には顔から腕、足までを全て布で覆い、完全防備体制で作業に当たらなければならない。

ここの畑では約15カ月かけてゆっくりとパイナップルを育て上げるという。ある程度の大きさになったら新聞紙で包み込み、表面が日焼けしすぎないようにする。そして、表皮に亀裂が出だしたら熟れ始めた証拠。黄色くなりすぎないうちに大きな刀で身を切り落とす。一個をカットするのはわずか数十秒ほどで、その手際の良さには圧倒される。

切り出されたパイナップルは袋に入れて運び、トラックに積み込まれていく。作業は終始無言で行われ、こんなところからもひたむきさが感じられる。袋は約20キロと重いため、高齢者にはかなりの重労働かと思えるが、そんな素振りを全く見せず、作業は休むことなく続けられる。

その様子を撮影していると、仕事を終えたおばさんが熟したパイナップルをお裾分けしてくれた。夜露を浴びたパイナップルはひんやりとしていて驚いた。「夜の農場は天然の冷蔵庫だよ」とおばさんは笑顔を見せた。早朝の農場だけで味わえる冷たいパイナップル。かぶりつくと、濃厚な甘さが口全体に広がり、果汁があごの辺りまで滴ってきた。大地の恵みに感動を覚えずにはいられない瞬間だった。

とっておきのパイナップルデザート

台湾のパイナップルはいろいろな楽しみ方がある。

まずはおなじみのパイナップルケーキ。現在はさまざまなメーカーが美味しさを競っていてバリエーションが豊富だ。ここ關廟にある「鐵金鋼」も有名店の一つ。現地産にこだわったパイナップルケーキが味わえるほか、ドライパイナップルや中華パイの生地にパイナップル餡を挟んだ「焼餅鳳梨酥」も人気がある。台北市内にも支店があるのでぜひ試してみたい。

また、台南市内の西市場にはパイナップルデザートの専門店がある。關廟出身の女性が経営する「凰商號」は金鑽鳳梨を用いたデザートが好評を博している。看板メニューは「鳳梨冰茶」。これはパイナップルをじっくり4時間ほどかけて煮込んで作られたジュースで、果肉がふんだんに入っている。また、手作りのパイナップルジャムを練り込んだトーストも人気だ。

ビタミンBを多く含むパイナップルは疲労回復や夏ばて防止にも効果がある。絶品の台湾パイナップルで酷暑を乗り切っていこう。

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7.西市場内にある「凰商號」。

(2016年8月号掲載)


關廟への行き方

台鐵台南駅近くのバスターミナルから「大台南紅幹線」に乗車。所要約45分。タクシー利用なら、市内から30分余り。

鐵金鋼

台南本店:所在地台南市關廟區中山路一段365號 電話06-596-5678

台北店:所在地台北市大同區承徳路三段36號 電話02-2597-4567

凰商號

所在地台南市中西區國華街三段16巷12號 電話06-223-2498 営業時間 11:00~20:00/日曜11:00~19:00(無休)


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