盧廣仲 クラウド・ルー

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ポジティブパワーで癒やし力満点

「音楽を通して日常の出来事をシェアしたい」

目の上でパツンと切りそろえられた前髪、大きなメガネ、Tシャツと短パンがトレードマークの盧廣仲(クラウド・ルー)。一見、『ドラえもん』ののび太くんが大人になったかのような愛嬌あふれる風貌だが、その実、台湾で今最も愛され、才能あるシンガー・ソングライターの一人だ。
美しいメロディーに乗せられた生活感あふれるユニークな歌詞。 “自然体”を具現化したような心地のいいサウンドは、たちまち聴く者をとりこにしてしまう唯一無二の魅力に満ちている。ファンが彼を“小隊長”、自分たちを“小隊員”と呼ぶなどファンとの距離が近いことでも知られるが、男女問わず幅広い年齢層から支持されているのは、1万人収容の台北アリーナでのライブを4度目も成功させたことが証明している。
そして11月に控えた日本初のソロライブでは、早くも東京分はソールドアウト。日本でも注目されつつある盧廣仲に、最新アルバムとライブについて聞いた。

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音楽はロマンチックな説教?

―まず今年の6月にリリースした『What a Folk !!!!!!』をご紹介ください。

「タイトル通り、フォークソングがメインのアルバムです。新曲の創作は常に新たな挑戦の連続ですが、僕はよく自分に課題を出します。今回は電子音、シンセサイザーを全く使わないという課題を設けました。このようにある制限をすると想像力が刺激され、逆に新しい可能性が生み出せるのです。限られた素材で美味しい料理を作るのと同じですね。楽器もシンプルなアコースティックギターのみなので、前の4枚と比べると一番静かなアルバムです。また、みんなも一緒に歌えるように極力シンプルなメロディーを心がけました。昔の歌は自分でも歌いづらいと思うのがありましたから(笑)。タイトルの後ろにたくさんの感嘆符を付けたのは、このアルバムの音楽性や生活に対しての大きな期待を表現したかったのです」

―「今天睡在這裡」という曲は兵役に行った時の経験から作られたそうですね。

「ええ。僕は“替代役”(通常の兵役業務とは異なる労働スタイルで兵役に就く制度。入営の必要がなく、その他政府機関で従事する)の“社会役”で、恵まれない人の手助けをする担当でした。ある時ホームレスに髪を切ってあげることがあって、実際にホームレスの人に接触しました。ずっとホームレスという存在は知っていましたが、その時初めて彼らにとって必要な援助に直面したことで、この曲を書きました。目を反らし無関心でいたら、このような社会的な問題は消えないとあらためて知ったのです。兵役は終わりましたが、今でも定期的に生活必需品を必要とする団体に送るようにしています」

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―8月の台北アリーナのライブが終わった後も、お弁当をホームレスに配られていましたね。

「それは実は同僚のアイデアなんです。コンサートでは多くのスタッフのために大量のお弁当を注文しますが、多すぎたり食べなかったりした人の分が残りました。もともと博愛的な同僚がホームレスに配る提案をし、みんなが賛成したので一緒に配りに行きました。でも人を助けるにも訓練が必要ですね。例えばある日、僕は杖を使ってゆっくりと長い交差点を渡ろうとするおばあさんを見かけました。信号が変わる前に向こう側に渡れないだろうと心配して手助けに行ったものの、渡った後、おばあさんはひどく息を荒らしていたのです。『もしかして自分のペースでも渡れたかもしれない、余計なことしたかな?』と反省しました」

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―現代人がいつも携帯電話を使っている現象を歌った「手機仔」の歌詞はとても身近に感じます。台湾語で作ったのには何か理由がありますか。

「その方が合うという直感です。台南県の田舎に育ち、小さいころからよく台湾語の歌を聞いていたので、台湾語は僕にとって成長過程の一部です。今は台北に住んでいるので、台湾語の歌を聞くと郷愁にかられることがあります。『手機仔』は二つのバージョンがあり、『手機仔(一)』の歌詞は都会であまり見られない田舎の景色や、僕の子どものころの思い出などを書いて、僕の郷愁の表した歌でもあります。もう一つのバージョン『手機仔(二)』はあまり作ったことのない曲風で、シャウトする歌い方も初めて。全体的に静かなアルバムの中で一番スピードが早く、にぎやかな曲です。その中の『麥看你的手機仔』(携帯を見ないで)の詞は多くの人が一緒に歌っているように聞こえますが、実は僕が五つの人格になりきって歌っているんですよ(笑)。録音する時、特にハーモニーのパートを録るのが好きなんです。子どものころから従兄妹たちを呼んでみんなで違う声色でハモるのが好きでした。今はほかの人に頼まなくても、スタジオで一人で遊べるから楽しいです」

―ほかに特に気に入ってる曲はありますか。

「『善良的眼鏡』。善良なメガネをかけて、何事もいい面を見ると世界が美しく見えるよという良い考え方を、友達に語りかけるような曲です。良いことや考え方を思いついたら、いつも歌でみんなにシェアしたいと思っているから。聞き流さられるかもしれない言葉より、歌は何度でも聞けるから、有効的ですね。説教っぽいけど、でもそこまで説教の感じはなく……ロマンチックな説教と言えるかな(笑)。そしてこの曲がちょっと特別なのは会社の倉庫の中で、携帯を使って録ったことです。トイレやクローゼットの中などいろいろ試しましたが、その倉庫の音が一番いいなって思ったので、そこで録りました」

ギターを抱えているとひらめく瞬間がある

―11月に東京と大阪で初のワンマンライブを開催されますが、特別に準備されていることはありますか。

「もともと小さなスペースでライブをやってきたので、ライブ中にMCをするのが慣れているし特に好きです。ですから日本のライブでも、もちろん日本語のトークを用意しています。うまくできるのか不安ですが(笑)。また東京と大阪のセットリストは若干違いますので、楽しみにしていてください」

―以前にも何度か日本の音楽イベントに参加されたことがありますよね。

「フジロックフェスティバルには聴衆として2、3回行きましたが、出演者として参加したのはサマーソニック(開催地:千葉、大阪)とサンセットライブ(開催地:福岡)の二つです。特に9月のサンセットライブが印象に残りました。会場は海水浴場なのでもともとにぎやかな雰囲気で、聴衆も盛り上がってくれました。その楽しさがステージ上にも伝わってきて、とても楽しかったです」

―あなたの歌は生活感にあふれていて、多くの人が「共感する」と言います。

「僕は皆さんと同じ普通の人間ですから、似た経験があるのは不思議じゃないと思います。生活の中にあること、経験したことを写真や文字で記録し、ネットなどで周りの人にシェアするように、僕はただギターで歌にするという方法でみんなにシェアしているだけなのです」

―創作の際、壁にぶつかることはありませんか。そんなときはどのように乗り越えますか。

「常にぶつかっていますよ。その壁を越える唯一の方法は諦めないことだと思います。振り返ってみれば山も谷もほんの一瞬だけなのだから、できないと怖がらずに、現在を、生活が与えるものを大切にして、オープンな心を保ち、ずっと試し続けることが大事ですね。ずっとギターを抱えていると、いつか神が降りてひらめく瞬間が来ます」

―影響を受けた歌手はいますか。

「歌手というよりも“musician”(ミュージシャン、音楽家)に憧れていました。ギターがとても上手で、ダンスも格好いいプリンスと、キーボード、ハーモニカに堪能なスティーヴィー・ワンダーが大好きです。今の僕が歌うだけではなく、こうしてギターを抱えて引き語りをする形になったのは彼らの影響が大きいですね」

―シンガー・ソングライターとして今後の目標は?

「まだ作ったことがない曲風がたくさんあるので、これから少しづつチャレンジしていきたいです。『手機仔(二)』で新しい可能性を発見したので、次のアルバムではにぎやかな感じにしてみたり、ダンスに挑戦してみるかもしれませんから期待してください。そしてまだ何とは決めていませんが、新しい楽器をマスターしたいです」

―あなたの髪形や服装はとても個性的ですが、こだわりポイントを教えてください。

「髪形は分厚い前髪が好きです。創作の源を前髪の下に隠しているからここはミステリーエリアです(笑)。すぐに見透かされないから安心感が感じられるんです。服装は基本的にカジュアルで見た目がいいなら何でも好き。好きなブランドはミスタージェントルマン、ビームスかな」

―でも兵役に行った時は、その大切な髪を全部剃りましたよね。

「頭が丸出しだから、それはまた別の感じですね。早く洗髪できるので、まんざら悪くもなかったです(笑)」

―台南はここ数年日本人にも人気の場所です。故郷・台南でお薦めの食べ物やスポットを教えてください。

「個人的には台南で一番好きな食べ物は虱目魚(サバヒー)のスープです。とても新鮮で小骨もきれいに抜かれているので食べやすいですよ。観光スポットなら、観光客があまり多くなく、古い建築や自然な景色が見られる西港(台南市西部)を自転車で回るのがお勧めです」

―最後にご自身の座右の銘があれば、教えてください。

「『ポジティブ思考は裏切らない』。ずっと太陽に向かっていると……日焼けします(笑)。ん? 間違ってませんよ? 日焼けしたら、“黑皮(ヘイピー)”(英語のHappyと発音が酷似)になります(笑)」wf1070013

Profile
2006年シングル『淵明』をリリース。翌年リリースした2枚目のシングル『早安,晨之美!』で学生層を中心に絶大な人気を集めた。08年5月にファーストアルバム『100種生活』でメジャーデビューを果たす。09年に台湾のグラミー賞「金曲奬」で「最優秀新人賞」および「最優秀作曲人賞」を獲得。その後アルバム『七天』(09)、『慢靈魂』(11)、『有吉他的流行歌曲』(12)をリリース。最新アルバムは今年6月、3年ぶりにリリースした『What a Folk !!!!!!』。日本盤も近日発売予定。また11月11、12日に東京、大阪(心斎橋SOMA)でワンマンライブ開催。

2016年11月号掲載

撮影:Kotori Kawashima


日本公演インフォメーション
●東京 2016/11/11(金) 原宿ASTRO HALL(sold out)
開場・開演 OPEN 18:30 / START 19:00
チケット ¥6,000-(税込/All Standing/1Drink別)
プレイガイド イープラス:eplus.jp
INFO クリエイティブマン:03-3499-6669

●大阪 2016/11/12(土) 心斎橋SOMA
開場・開演 OPEN 16:30 / START 17:00
チケット ¥6,000-(税込/All Standing/1Drink別)
INFO キョードーインフォメーション:0570-200-888
注意事項 ※未就学児(6歳未満)のご入場をお断りさせていただきます。


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