●日本時代創業の書店が紡ぐ歴史

「社会奉仕だと思って続けている。この土地の記録を残したい」――。日本語書籍を販売する老舗書店「鴻儒堂」の店主、黄成業さん(70)は出版不況といわれる中、親子三代にわたって受け継いだ店を守り続けている。日本語書籍の出版も手掛け、先月には白色テロの受難者、郭振純さんの伝記を日本語に訳した「意志で生きる命の溜まり」を世に送り出した。黄さんは「生きている間は店を続けたい」と使命感に燃えている。

同店は日本統治時代の1936年に黄さんの祖父が創業。当初は古書の専門店として南昌路に店を構えていたが、戦後は台北きっての書店街、重慶南路近辺に移り、「文藝春秋」など日本の有名誌や工業、漁業に関する日本語の専門書籍を取り扱った。後に著名になった人も店を訪れたといい、李登輝元総統が合作金庫銀行に勤めていた頃、よく本を買いに来たと黄さんは振り返る。

黄さんは1981年に店を引き継ぐと、日本語書籍の出版社を立ち上げた。戒厳令が敷かれた1949年生まれの黄さんは、国民党による不当逮捕や言論弾圧が行われた時代を経験しており、書籍の出版にはいっそう力を注いだ。過去には台湾の独立に尽力した黄昭堂氏や史明氏の著作の日本語版の出版を手掛けた。これらの書籍は今でも店の目立つ場所に並べられている。

店は80年余りの間、場所を転々としながらも台北の街と共に歴史を歩んできた。店舗面積は全盛期の半分以下。黄さんの後を継ぐ者はもういない。「書店をやるには根性がいる」と話す黄さん。1冊1冊売っていれば、買う人は必ずいると強い覚悟を見せた。(中央社フォーカス台湾)

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