24時間体制で患者と向き合う看護師

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新北市新店區出身・在住
耕莘醫院暨安康院區 護理師(看護師)
1993年5月12日生まれ(24歳)

取材・文:吉岡桃太郎

台湾では現在、約15万人の看護師が医療現場で働いているといわれている。入院病棟では二交代制や三交代制が敷かれ、24時間体制で看護師が看護に当たっている。そんな医療現場で日夜患者と向かい合っているのが若手看護師の高慈旋だ。高等専門学校で5年間にわたって看護師のイロハについて学び、看護師免許を取得した。(文中敬称略、以下同)


ドラマの医療現場に憧れ

高慈旋が生まれ育った新店市(現・新北市新店區)は、台北市の郊外にある住宅地と工業団地が混在する緑豊かな街だ。新店溪(河川)の河川敷にはサイクリングロードが整備され、吊り橋のある碧潭風景区は新店の住民の憩いの場となっている。「子どものころは夜市なんかもあって、地元の人しかいなかったんですが、最近は観光客も多くてオシャレなカフェも増えましたね。逆に屋台とかが減ってちょっと残念です」

元々台湾にはテレビ局が3局しかなかったが、1993年に法整備が整ったことから合法のケーブルテレビが普及しはじめた。台湾でテレビっ子が増え始めたのもこのころだと聞く。高慈旋もそんな一人だが、「中学生の時、医療ドラマを見て、医師をサポートする看護師ってかっこいいなぁと思ったんです」と看護師になったきっかけを語る。中学3年生の時に進路を決める際、卒業してすぐに看護師の勉強ができる康寧醫護暨管理專科學校(現・康寧大學)を選んだという。台湾では「五專」と呼ばれる修業年数5年の学校で、日本の高等専門学校(高専)に相当する。

看護について学んだ計7年

学校ではまず理論から始まり実技に進んでいく。高慈旋が特に忘れられないのが2年生の時の注射の実技の授業だという。「クラスメートにビタミン剤を注射して練習するんですが、慣れないので青あざができちゃったりするんです。患者さんの気持ちがよくわかりました」また、妊婦の身になって考えられるように、赤ちゃんの重さがある妊婦体験ジャケットを着たりもしたという。

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4年生の後期になると、病院などでの7カ月に及ぶ実習が始まる。「小児科、産婦人科、精神科、内科だけでなく、市の保健所でもやりました」病院だけでなく、医療と関わりのある機関でも実習を受けることで、医療の全体像が見えてくるのだという。

実習が終わると、看護師の国家試験に向けての勉強が始まる。そのころには50人以上いたクラスメートも徐々に減ってきたという。「一緒に卒業できたのは30数人ですかね。そして看護師になったのは20人ぐらいです」

政府の統計によると、看護師の免許を持っている人は26万人以上いるのだが、実際に医療現場で働いている看護師は15万人程度だというから、4割程度の人が「ペーパー看護師」という計算になる。看護師の仕事は台湾でも重労働で、看護師不足が問題になっている。高慈旋の同級生の中には負担が比較的少ない美容クリニックや人工透析センターで看護師をしている人もいるという。

「五專」を卒業した高慈旋は、すぐに看護師の仕事には就かずに「二技」と呼ばれる2年制大学に進学することにする。「看護師長になるには大卒じゃないとダメなんです。大学でのキャンパスライフにもちょっと憧れてましたし」病院の研究室でアシスタントとして働きながら、長庚科技大學の看護学科で2年間学んだ。

患者さんの笑顔のために

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看護学科を卒業したら、その大学の付属病院や関連病院で看護師になるのが一般的だが、高慈旋が通っていた長庚科技大學は桃園空港に近い桃園市亀山区にあるため、父親に「せっかく近くに病院があるんだから、そんなに遠くまで通うことはないだろう」と言われ、新店区の自宅近くにある耕莘醫院暨安康院區に勤めることにする。ただ、母親はちょっと心配していたという。「私って天然なところがあるので、母が看護師になって大丈夫かって。自分でそれがわかっているから、看護師の服を着たら気持ちを引き締めて慎重に仕事をします」

高慈旋が勤めるのは外科の入院病棟。仕事は三交代制で早番が朝7時30分から午後3時30分まで、準夜勤が午後3時30分から11時30分まで、夜勤が午後11時30分から翌7時30分までだ。生活のリズムが崩れないように、早番、準夜勤、夜勤を混ぜるのではなく、同じ番のローテーションを2カ月から3カ月続けて組むという。「仕事は大変ですが、患者さんからありがとうと言われるとやりがいを感じます。励ましてくれる患者さんもいますし」

入院患者の中には余命幾ばくもない人もいる。「数分前まで動いていた人が急に動かなくなるんですよ。これは本当につらいです。でも他にも看護が必要な患者さんがいるので、いつまでも落ち込んでるわけにはいきません」死と向き合わなければならない仕事でもある。

今はアメリカの正看護師の資格「NCLEX-RN」の取得を目指し、勉強もしている高慈旋。病院ではまだ若手看護師だが、「先輩たちのように後輩を指導できるような看護師になって、ゆくゆくは看護師長になりたいです」と将来の夢を語る。中学生の時に憧れた看護師という仕事を生涯続けていくことだろう。

(2018年3月号掲載)

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