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hsiu 古き良き靴文化を現代の女性に届ける

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取材・文:高橋真紀
台湾の若者は実にクリエーティブで、昔からの文化をリメークするのがうまい、と思う。例えば日本統治時代の民家をリノベーションしたおしゃれなカフェ。台湾の電鍋をポストカードやステーショナリーにあしらった雑貨類。あらゆる分野で若いデザイナーが古き良き台湾の文化を、現代的に生まれ変わらせている。
今回紹介する「hsiu」という革靴のブランドも、20代の若者が「台湾の伝統工芸を伝えていきたい」という志で立ち上げたものだ。
靴のデザインも手がけているオーナーの江佩嘉さんに話を聞くと、彼女は台南出身。ある時、台南の老街を歩いていて、「繡花鞋(シウホワシエ)」と呼ばれる刺繍の施された布靴に出合った。台湾に昔から伝わる美しい伝統工芸に興味を持った江さんは、職人の仕事場を訪れ、靴作りを教わるようになったという。wdsc09535
「その時に、中華圏には女性のための伝統的な靴の文化があることを知りました」
古来から中国の女の子には、1歳になると「虎頭鞋(フートウシエ)」という、虎の頭の刺繍が施された布靴を身に着ける習慣があった。虎の頭が病気や災いから守ってくれるという、魔除けの意味を持つ靴である。その子が成長して16歳になると、今度は大人になった証に「繍花鞋」という花模様の布靴を、結婚する時には「婚鞋(フンシエ)」という、結婚のための靴を履く。この世から去り、人生の終わりを迎えた時のために、あの世へ履いていく「壽鞋(ショウシエ)」という特別な靴がある。
人が成長し、変化していく過程に寄り添う靴があるという文化に興味を持ち、美しい刺繍に魅せられた彼女は、「繡花鞋」を現代にも伝えていきたいと考え、秀逸なアイデアを思いついた。布靴として受け継がれてきた繡花鞋を、現代の女性にも使いやすいように、革靴にアレンジしたのだ。

小標刺繍はすべて「台湾」がモチーフ

革靴にあしらわれた刺繍のデザインは、すべて台湾、主に台南に関連したものがモチーフになっている。
例えばブランドの代表作である「輿圖鞋(ユートゥーシエ)」(写真中央/3380元)の花のような絵柄は、台南の地図を模様のようにデザインしたもの。ストラップ付きで履きやすく、ロングセラーとなっている。「海的守護」シリーズ(写真左/3680元)は、昔ながらの守り神である「劍獅(ジエンシー)」という、剣をくわえた獅子の顔を刺繍したもの。台湾といえばマンゴーかき氷、という外国人には、「瑕不掩瑜(シアブーイエンユー)」シリーズの「芒果冰(マングオビン)」(写真右/2580元)も人気だ。その名の通り、マンゴーかき氷をデザインした靴で、マンゴーを表す黄色やオレンジ色がポップでかわいい。


刺繍だけでなく、履き心地にも手作りならではの細かい仕事が光っている。すべて牛革を使い、型はアジア女性の足の形に合わせて設計。インソールも特別に作ったもので、クッションが効いて長時間歩いても疲れない工夫がしてあるそうだ。
広告を打ったことはないが、デザインに関する展示会やイベントに参加したり、オフィシャルサイトでブランドのストーリーを紹介し、徐々に顧客を増やしていった。他のブランドや他業種とのコラボレーションにも積極的だ。台南の地図をあしらった「輿圖鞋」は、民族舞踊の団体がステージ上で身に着けたこともある。
最新作はハイヒールタイプのシリーズ。これまでフラットシューズのみ展開していたが、お客さんの要望で新たにハイヒールを作った。2017年1月末には結婚式用の「婚鞋」を発売予定。台湾では結婚の際、「末長くお幸せに」という意味で「百年好合」という言葉を使う。婚鞋は片方に「女」、片方に「子」という字を模様化し、両足合わせて「好」となるようなデザインを予定しているそうだ。男性用の要望も多いので、いずれは発売したいと考えているし、かばんやアクセサリーなど、刺繍製品を靴以外にも展開するのが目標だ。
「靴の刺繍を見ることで、台湾を知ってもらえたらうれしいと思っているので、今後も台湾をモチーフにしたデザインをしていきたいです」。
若きオーナーは夢を持ちつつ、しっかりした信念を持っている。
台湾では「Pinkoi」などのサイトのほか、迪化街のショップ「簡單喜悅」や台南の「林百貨」などで販売中。台南の工房では、靴作りの見学も可能で、商品を買うこともできる。今年から日本のハンドメード商品販売サイト「Creema」からも購入できるようになった。
履くのがもったいなくなるほど美しいhsiuの靴たち。古来の考えに則り、人生の節目に履く特別な一足として、大切に置いておくのもいいかもしれない。

(2017年1月号掲載)


Hsiu工作室
URL:www.hsiu-taiwan.com
所在地:台南市中西區大福街40號
電話:06-222-6081

●台北店
所在地:台北市大同區迪化街184號
営業時間:9:30~19:00

●林百貨店
所在地:台南市中西區忠義路二段63號2樓
営業時間:11:00~22:00

●住好喲 –誠品高雄駁二店
所在地:高雄市鹽埕區大勇路3號(駁二藝術特區C4倉庫)
営業時間:10:00~21:00


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台湾製造本舗vol.26 宜龍 EILONG  

洗練されたデザインと戦略で 台湾茶器産業の先端を行く  

取材・文:高橋真紀

台湾にいればおのずと茶器を見る機会も増える。茶器を扱うお店で、デザインに引かれて手に取ると、よく「宜龍 Eilong」というロゴを見た。茶器メーカーなのだろうが、どこにいけば専売店があるのだろう。そう思っていたら、観光客でにぎわう永康街に店舗ができているのを見つけた。店員さんに聞いてみると、このお店ができたのは昨年2015年。しかし社史を調べてみると1987年創業、とある。そこで、現在業務総監として宜龍の事業を取り仕切る、陳世河さんに話を聞きに行った。
創業者は陳さんの父親ということだった。1960年代に焼き物で有名な街・鶯歌で陶器を売っていたのが始まりで、87年に親友と共に「宜龍」というブランドを打ち出した。鶯歌の陶器産業が衰退した90年代、宜龍は中国への進出に活路を見出す。2000年には中国に子会社を設立し、大規模な工場での量産化に成功。手ごろな価格も強みとなっていった。

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話を聞いた陳世河さんは次男で、現在デザインの多くを手掛けるのは長男の陳世億さんだという。「僕たちは5人兄弟で、家も貧しかった。漫画を買うお金がない時は、兄が漫画を描いてくれました」。絵や芸術の才能に恵まれた長男の存在が力となり、洗練されたデザインの茶器が生まれていく。2000年以降、2代目が経営面を任されるようになってからは、これまで明確な役割分担がなかった仕事をデザイン部、営業部、経理部などに細分化。それぞれの仕事を専門化したことで、業績が大きくアップしたという。
台湾内での出店は、いつも話には上るものの、先延ばしになっていた。商品を卸している顧客の中には、メーカーが小売販売の前線に出てくることに反対する声も多かったのだ。しかし中国での成功で名前が広まると、台湾内に店舗を出してほしいという声がさらに高まった。顧客を説得してオープンにこぎ着けたのが2014年。1号店は九份に誕生した。現在は永康街のほかに台北駅前と、宜蘭に店舗を構える。

斬新なデザインと経営戦略

ブランドを代表するデザインの一つに、二つの異なる素材を組み合わせたものがある。最初に誕生したのは2006年ごろの「晶艷亞洲」と呼ばれるシリーズ。ガラスのティーポットに磁器のふたが美しいコンビネーションをみせ、東洋と西洋が融合した独特の雰囲気がある。真っ白な磁器と木製の取っ手やふたからなる「白. 居易」シリーズも人気。陳世河さん曰く、「宜龍の強みは、50年以上陶磁器に携わって、材料を知り尽くしていること」。見た目の美しさだけでなく、使い勝手も抜群で、北アメリカやヨーロッパにも輸出されている。海外に顧客が多いため、各国の安全基準もクリア。イギリスではハイアットやウエスティンなど名だたるホテルの館内で、宜龍の茶器が使われているそうだ。

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十分順調に見える宜龍だが、陳世河さん兄弟はもっと先を見据えていて、今後の計画が幾つもあるということだった。まずは中国でオンラインショップを充実させること。つづいて2017年3月に千葉の幕張メッセで開催される「FOODJAPAN EXPO(国際食品・飲料展)」で成功し、日本進出への足掛かりにしたいと考えている。
将来的には中国の工場を台湾に移すのが優先課題だが、そのためには人材確保の問題を解決しなければならない。機械化で量産できるとはいえ、焼き物の丸みや継ぎ目を修正するなど、細かい作業の多くはまだ手作業だからである。これにはとんでもない秘策があった。なんと鶯歌の職人たちの経験とノウハウを、コンピューターにプログラミングするというのだ。現在開発中の“陶芸ロボット”とでも呼ぶべき機械が完成すれば、工場はすべてが完全にオートメーション化され、24時間陶器を作ることも可能になるという。
台湾内の店舗も今後南部などに展開予定。ここにもコンピューターによる画期的な戦略を取り入れる。店舗を訪れた人、特定の商品を見た人の年齢や性別を、カメラから自動的に判別、集計し、販売促進に生かすのだそうだ。もちろんこれは台湾初の試みとなる。
中国進出や斬新なデザインで台湾茶器産業の先端に躍り出た宜龍。製造とマーケティングのデジタル化によって、今後どのような変化が起こるのか。注目していきたい。


宜龍 EILONG
URL:www.eilongshop.com.tw

直営店

●永康店
所在地:台北市大安區永康街31巷16號(MRT東門駅5番出口)
TEL:02-2343-2311/營業時間:12:00~21:30
●九份店
所在地:新北市瑞芳區輕便路296號
TEL: 02-2496-9685/營業時間:11:30~20:30
●傳藝中心
所在地:宜蘭縣五結鄉五濱路二段201號(民藝街)
TEL:039-507649/營業時間:09:00~18:00
●凱撒店
所在地:台北市忠孝西路一段38號(台北駅M6出口)
TEL:02-2388-0807/營業時間11:00〜22:00


(2016年12月号掲載)

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泉發蜂蜜 台湾産蜂蜜とローヤルゼリーの老舗専門店

取材・文:高橋真紀

食の安全が見直されている台湾では、天然食材を扱う老舗に再び注目が集まっている。1919年から蜂蜜とロイヤルゼリーの生産を開始した「泉發蜂蜜」もその一つだ。民族西路に構えた店舗は57年の時を経ている。6軒の支店も地元の人たちに愛され、蜂蜜といえばここ、と誰もが思い浮かべる老舗である。
ブランドのスタートとなったのは「野蜂蜜」(410グラム380元、820グラム620元)という四季の花を使った蜂蜜。産地は屏東で、海抜1000メートル以上の高地で栽培されている。ビタミンBを多く含む自然健康食品として、発売から97年、店の看板を守ってきた。現在は台湾全土で生産された蜂蜜を取り扱っており、気候などによって左右されるものの、常時10種類前後から好みの蜂蜜を選ぶことができる。珍しいところでは台湾最大の湖がある日月潭で採れた「荔枝花蜜(ライチ蜂蜜)」や、金木犀の花から採れた「桂花蜂蜜醬」などが人気だという。w14571858
台湾で一般的に市販されている蜂蜜は、「龍眼」という台湾ではおなじみのフルーツの蜜で作られたものだ。龍眼は高温多湿の地域で取れる果物で、台湾でも多く生産することができるため、圧倒的なシェアを占めているのだ。
蜂蜜は大まかに分けて、「草」から採れるやや酸味のあるもの、「果物」から採れる適度な甘みのもの、「花」から採れる甘みが強くて味の濃いものがある。植物の種類や産地によってバリエーションがあるそうで、こうした蜂蜜の奥深さを知ることができるのも、老舗の専門店ならではだ。

看板商品を使ったスキンケア商品

もう一つの看板商品は「ロイヤルゼリー」で、これも創業時から発売している。当時はロイヤルゼリー販売の草分け的存在だったことと、品質の良さで支持され続け、シェアの多くを占めている。そのままゼリー状にパッケージしたもの(100グラム800元、500グラム2180元)が看板商品。カプセルに詰めて飲みやすくしたものもある。ロイヤルゼリーは高温にさらされると変質してしまうため、温度管理には細心の注意を払い、運送も自社で行っているという。
ロイヤルゼリーとは、働き蜂が蜜を材料に体内に生成する成分。女王蜂にひたすら食べさせることから「ロイヤル」の名が付いた。女王蜂が働き蜂に比べて体も大きく寿命も長いことからわかるように、ロイヤルゼリーには驚くべき栄養価がある。定期的に摂取することで、健康維持や美容にも高い効果が実証されている。食品としてはもちろん、肌に塗っても高い保湿効果があることから、泉發蜂蜜でも化粧品の開発をスタート。今では化粧品開発部門もでき、蜂蜜やロイヤルゼリーと並んで同社の主力商品となっている。
w14689144 一番人気は蜂王乳玫瑰活顏滋養精華液(ローヤルゼリーバラエッセンス1280元)。ロイヤルゼリーのほか、ローズやラベンダーのエッセンシャルオイル、ビタミンEを配合した高濃度オイルだ。化粧水の前につけるブースターとしても使えるほか、シートマスクやファンデーションにも1滴たらせば保湿力がアップする優れもの。夜つければ眠っている間に肌を補修する機能もあり、愛用者からは「無敵油」と呼ばれているそうだ。今年新発売された「超完美系列」はシワの改善に特化した超完美抗皺拉提精華(シワ取りエッセンス1680元)が効き目の高さで評判を呼んでいる。
おすすめの最新商品は、初夏茉莉凝香蜜(580元)。グロスのようなパッケージとテクスチャーで、体につけて香りを楽しむ商品だ。ローズ、レモン、ジャスミンなどの植物と蜂蜜を使用。天然成分だけとは思えない優雅で甘い香りを放ってくれる。
MRT台北駅構内の微風台北駅店、忠孝復興駅から徒歩5分の忠孝店などの店舗では自社の蜂蜜を使ったオリジナルドリンクも提供している。市内のドリンクスタンドと変わらない値段で買えるドリンクは、天然の果物と蜂蜜の甘酸っぱさが染みわたる、体が喜ぶ味だった。泉發蜂蜜は創業以来大きな広告宣伝をしたことがないという。利用した人の口コミだけで顧客を広げ、100年の歴史を築いたその品質を、ぜひ実際に試してみてほしい。


泉發蜂蜜 本店
所在地:台北市民族西路218號
電話:02-2585-0399
URL: www.cfhoney.com


(2016年11月号掲載)

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古裂壺 – 唯一無二の味わい

茶館をはじめ、茶葉店やお土産店の一角などでも気軽に見かける台湾の茶器は、日本のものより一回りも二回りも小ぶりで、見た目にもかわいらしい。ちょっと贅沢な旅のお土産にと購入される方も少なくないのではないだろうか。そこで今回は、最近話題のちょっと変わった茶器、表面に無数の“裂紋”(ひび割れ模様)が入った「古裂壺」という急須を紹介しよう。


陶磁器のひび割れ模様は南宋時代にはすでに見られ、氷が割れたような様子を例えて“冰裂紋”とも呼ばれる。“冰裂紋”は特に青磁器に多く、中国陶磁器の伝統的な文様だ。日本では「貫入(かんにゅう)」と呼ばれ、多くの作品に見られる手法でもある。これらは素地と釉(うわぐすり)の膨張率、収縮率の差により、焼成後の冷却時に釉の部分にのみひびが生じるもので、素地には影響を及ぼさない。
対して、この古裂壺は、釉ではなく素地自体の表面がひび割れている。素地にひび割れがあるということは、本体に一定の厚みがなければ水が漏れてしまうわけだが、厚みがありすぎると今度は重くなって実用性に欠ける。そのぎりぎりのバランスを追求して完成したのが古裂壺だ。磁器の成分をほんの少し足すことで、薄くて強い素地が実現したという。


ひびを作る主な工程は、「形成」「乾燥」「焼成」の3段階。温度や湿度など、偶然の要素に大きく影響されるとはいえ、作り手にも高い難度が求められる技法だ。細心の注意を払っても、最終的に髪の毛ほどの亀裂が一つでも生じてしまえば、急須としての役目を果たさなくなってしまう。全体の3割ほどしか実用に耐え得るものは出来上がらないというから、完成品に有り難味が増すというものだ。

陶器を「育てる」

作り手の思いや精神状態も含め、さまざまな要素の積み重ねによって出来上がる古裂壺の模様は千差万別。それこそ指紋のように、同じものは二つとない。手に取ってみると、ざらっとした割れ目の感触が不思議と心地よく、見た目よりずっと軽いことに驚く。もう一つ特徴的なのは、お湯を注いだ時の様子だ。急須から生まれた湯気が一度表面のひびに吸い込まれ、再び上にたゆたっていく様は息をのむほどに美しい。
土の温かみを色濃く残す古裂壺は、顔料はもちろん、釉さえ塗られていない。だから毎日使い込んでいくと、お茶の成分が陶器に染み込み、深みのある色に変わっていく。これを台湾では“養壺”(急須を育てる)と呼ぶ。何十年も使い続けられた茶器の中には、お湯を注ぐだけでなんとお茶の風味まで味わえるものもあり、そうした茶器には骨董品のような高値が付くという。
世界に一つだけの模様を刻んだ古裂壺に、日々茶葉を抱かせ、お湯をたたえると、いつしかお茶を楽しんだ時間の分だけ、茶器もゆっくりと変化していく。古裂壺を見ていると、そんな贅沢(ぜいたく)で素敵な時間を重ねる未来を想像させられる。

“裂紋”に魅せられた陶芸家

テクニックだけではコントロールしきれない模様に魅せられ、究極の“裂紋”を追求し続けるのは、石古不化こと古健昌さん。「古裂壺」の名付け親でもある。独学で陶芸の道を究めた彼は、「食古不化」(学んでもうまく消化できない。生かせないこと)という成語の一字を自身の姓に置き換えた創作ネームで活動している。
元々お茶を飲むことが趣味だったという石古不化は、茶器の中でもなぜか急須に特別な魅力を感じ、気に入ったものを収集していた。ある日「買うより自分で作ってみれば?」という妻の勧めでろくろを回し始めると、たちまち創作にのめり込む。ついに30代半ばで脱サラし陶芸の道へ。妻が家計を支える傍ら、「作りたい」という気持ちの発露からひたすら創作に打ち込むこと15年。近年、古裂壺が口コミで耳目を集めるようになった。
創作への熱意を石古不化はこう語る。「作りたい、ただそれだけ。先入観を持ちたくないから独学でやってきたし、売ることを考えないから自由な発想ができる」。確かに古裂壺をはじめ、石古不化の作品にはユニークな物が目立つ。本物の蜂のさなぎを陶器に取り入れた「蜂蛹系列」、注ぎ口がない急須、注ぎ口だらけの急須……緑豊かな木々に囲まれた烏來のアトリエに置かれた作品は、どれも遊び心に満ちていた。

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石古不化粉絲團
台湾代理人:張なつみ
電話0930320088
URL:LINK


取材・文:編集部/写真:彭世杰

(2016年7月号掲載)

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牛頭牌沙茶醬 – 台湾の鍋には欠かせない 国民的調味ソース

日本人として鍋好きを自負していたが、台湾人には負ける。ありとあらゆる所にしゃぶしゃぶ屋があるだけでも驚きなのに、そのほとんどが1人前サイズの一人鍋。大勢でつつく楽しさがない分、自分のペースで好きなものを食べられる。肉や具材を好きなだけ提供するビュッフェ形式の鍋屋さんも定番で、真夏であろうが鍋店はどこも盛況だ。
チンゲン菜やタロイモも立派な鍋用野菜で、具材も日本とはだいぶ違うのだが、台湾火鍋の特徴といえば、つけだれに必ずといっていいほど付いてくる茶色の調味料。これが今回ご紹介する台湾の定番ソース、「沙茶醬」である。
台湾で沙茶醬の代名詞といえば、「牛頭牌」というブランド。中国大陸から移住した外省人のオーナーが1958年に創業した好帝一食品公司が製造販売している商品だ。「沙茶粉」という粉末ソースの発売でスタートした同社は、すぐに瓶詰めの「沙茶醬」を生産し、台湾全土にその存在を広めることとなった。創業者の劉來欽氏は「台湾沙茶醬の父」と呼ばれており、沙茶醬の国内販売シェアは、現在もなんと90%を誇るという。1人暮らしにもちょうどいいサイズから業務用まで、瓶詰めと缶詰が販売されており、全聯福利中心、頂好(ウェルカム)などスーパー各店ならどこでも手に入る。業務用は鉄板焼きや牛肉麺のお店で使われることも多いそうだ。
そもそも「沙茶醬」とはどのような代物なのか。醤油のような色だが、かなりドロッとした具材たっぷりのソースだ。煮干し、干しエビを原料とした海鮮ベースで、ネギやニンニクを加えているのだが、なんとなく甘い。鍋のつけだれ以外に炒め物やチャーハンの調味
料としても重宝されている。
甘さが前面に出ている台湾風の味が特徴なのだが、もともとはマレーシアやインドネシアなどの東南アジア地域で、焼き鳥などに使われていたsa te(サテ)と呼ばれるソースが起源とされている。「茶」という文字もお茶とは関係なく、「サテ」を台湾語に当てると「沙茶」という文字になるので、これにソースという意味の「醬」をつけて命名された。東南アジアのサテが中国南部に入って広東省の潮汕という地域で流行の調味料となり、その後、国民党政府の進出によって台湾に持ち込まれた。
本家サテにはピーナッツや大豆が欠かせないが、牛頭牌では使用していないので、イスラム法で認められたハラール料理にも使うことができる。添加物やアミノ酸調味料なども含まず、天然の材料にこだわった製品はGMP国家認証ほか、ISO9001及びHACCPなど各種食品安全基準を通過している。
昨年発売された「紅蔥醬」調味ソースも人気上昇中。紅蔥頭(エシャロット)をベースにした濃厚な味が特徴的だ。材料の紅蔥頭はすべて台南、雲林などの台湾産を使用しており、香りが強いのも支持される理由。パンチがあるので、麺類の調味料としてもピッタリだ。%e9%a6%99%e8%8f%87%e6%8b%8c%e9%86%ac%e5%95%86%e5%93%81%e7%85%a7wlow
好帝一食品の林志穎・副總經理(副社長)に今後の展望を聞いてみると、明快な三つの答えが返ってきた。「一つ目は調味ソースの分野でナンバーワンになること。二つ目は商品開発力を強化すること。三つ目は市場を海外へ広げ、日本やその他の国にもより多くの商品を届けること」。沙茶醬は2008年にISO22000國際品質認證を獲得し、欧米への輸出もスタート。世界中のチャイナタウンで販売され、日本でも横浜中華街の中華食材店で買うことができる。
2016年3月にはシイタケの香りが食欲をそそる「香菇拌醬」を発売。現在は四川料理などに使われる「麻辣醬」を試作中で、まずは四川料理の本場・中国大陸で発売して反応を見てから、台湾でも発売する計画だという。このほか素材にこだわった「養身高湯」(健康だしスープ)も開発中。食の安全に敏感な世間のニーズに応えていきたいと考えている。「企業理念の根本は、自分の本当に良いと思う商品を世に送り出すこと」と林副總。沙茶醬から始まった消費者目線の商品開発は、まだまだ可能性を秘めているといえそうだ。

取材・文:高橋真紀

(2016年8月号掲載)

 

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